製品化学物質の情報伝達について(その3)

製品化学物質の情報伝達とは何か?

この情報伝達シリーズの(その1)(その2)では、その前段階として製品含有化学物質管理に関することを書きました。しかしながら、今回のシリーズの本題はあくまで情報伝達ですので、今後はその内容に沿ったものを書いていきたいと思います。
「製品化学物質の情報伝達とは何か?」とかいういきなり、大上段な見出しになっていますが、そんな大げさなものではありません。

単純に言ってしまえば、自社の製品を顧客に引き渡すときに、製品に関する化学物質の情報を伝達することなわけです。

製品のどんな化学物質の情報をどう伝達するのか

一口に製品に関する化学物質の情報を伝達すると言っても、いろいろなことが考えられます。

  • 製品に含まれているどの化学物質を伝達するの?、まさか全部じゃないよね!
  • 化学物質名以外にどんな内容を伝達しなければならないの?
  • 自分が相手に送るの?それともどこかにおいておくと相手が勝手に持って行ってくれるの?
  • どんな媒体で伝達するの?
    紙?、pdf?、なんか決まった電子書式?、Excel file?….
  • どんな手段で伝達するの?
    郵送?、メールにファイル添付?、相手方のサーバーにアップロード?
  • 法的な規制は存在するの?
  • 顧客からこの情報が欲しいって言われるけど、それって規制?
  • etc…

とまあ、ちょっと考えただけで手法や伝達手段にさまざまなバリエーションが考えられます。実際、当ブログの記事を読んでいただければ、上に書かれている疑問形の部分については、ある程度説明しているものもあります。

日本の一般的な工業製品で化学物質の情報伝達について義務化されているのはSDS

まず、製品に関する化学物質の情報伝達で、日本において義務化されているものはSDS(Safety Data Sheet, 安全データシート)です。SDSによる情報伝達を要求している規制は、化管法、労働安全衛生法、毒劇法(実際の実施項目はその下位規則にある場合があるにしても) の三つになります。ラベル表示もあるのですが、本記事では扱いません。
大部分の場合(例外は存在します)、これらの規制はいわゆる成形品に対してではなく化学品(化学物質そのものと混合物)を対象としています。
また情報を伝達しなければならない項目は、多岐にわたっており化学物質名だけはありません。その内容は、以下のJIS規格で書くことが推奨されています。
JIS Z 7252:2019  GHS に基づく化学品の分類方法
JIS Z 7253:2019 GHS に基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法-ラベル,作業場内の表示及び安全データシート(SDS)
この点は、以前記事にちょっとだけ書きましたので参考にしてください。
SDSに関しては、伝達する媒体も決まっており、基本は文書となっていますので紙ベースになります。ですが、この時代いつまでも紙ではないでしょうということで、省令で定める方法という文言が記載されており、化管法は磁気ディスク(いつの時代だ)でもいいようですし、すべての規制でpdfファイルやネット上に置いておいて持って行ってもらうということも受け取り側が了承すれば大丈夫になっているようです。この辺りは、管理人あまり自信がないので専門家に聞いてください。

日本におけるSDSについては、いくつか重要な要件があります。
まず、言語は日本語でなければなりません。これは、化学物質を使う作業者が理解できる言語でなければならないからです。
また、SDSの伝達は、事業規模の大小や引き渡し数量の大小に依存しません。少量の引き渡しであっても必要です。
じゃあ、引き渡しの場合、毎回SDSを出さなければならないのかと言えばそうではありません。顧客に最初に製品を出すときは当然必要ですが、同じ製品をリピートされた場合は既に出しているので基本必要ありません。しかしながら、SDSに書くべき内容が変化した場合は速やかに再交付しなければなりません。当然、どの顧客にどのSDSを出したのかという管理が必要になりますね。

安衛法におけるSDS交付状況(平成30年度)は8割弱

厚生労働省は、毎年、労働安全衛生調査(実態調査)を実施していますが、その中の調査項目に「化学物質を製造又は譲渡・提供する際の安全データシート(SDS)の交付状況 」というのがあります。これによれば、平成30年度は、すべての製品にSDSを交付している事業所の割合は、77.6%となっています(URL)。
まあ、義務化されている項目でも100%ではないということですね。
更に言えば、この調査に対する有効回答率は55%となっていますから、すべての製品にSDSを交付している事業所は現実にはもっと割合が少ないのではと思ってしまいます。

次回からは、成形品に関する化学物質の情報伝達を中心に

化学品の情報伝達は、もちろん非常に重要ですが、今サプライチェーンを悩ましているのは、成形品に関する情報伝達かもしれません。
次回以降、ゆっくり記事化していこうと思います。