製品化学物質の情報伝達について(その17)情報伝達と自社工程2

製品化学物質の情報伝達について(その17)は、製品化学物質の情報伝達について(その16)情報伝達と自社工程1の続きです。

情報伝達と自社工程1では、下図のような顧客に納める部品X(自社としては製品)について、使用原材料と製造工程について考えました。

部品X
部品Xの構造

詳細は、製品化学物質の情報伝達について(その16)情報伝達と自社工程1で確認して欲しいのですが、説明に必要なので、まとめだけ記載します。部品Xも使用原材料も製造工程も架空のものです。

使用原材料と製造工程

使用原材料

・金属部品A:金属Aからできている部品、金属Aは自社指定、質量100g
・金属部品B:金属Bからできている部品、金属Bは自社指定、質量200g
・接着剤C:熱硬化性接着剤、特性評価にて選択、使用質量0.2g、SDS、chemSHERPAで化学物質情報を入手
・コーティング剤D:有機溶剤で希釈されているコーティング剤、コーティング剤そのものの割合は10wt%、残りは有機溶剤、SDS、chemSHERPAで化学物質情報を入手
・洗浄剤E:金属表面の汚れを取るために使用、SDSを入手

製造工程

工程1:納入された金属部品Aと金属部品Bを洗浄剤Eで洗浄する。
工程2:金属部品Aと金属部品Bを洗浄水ですすいだ後、乾燥させる。
工程3:金属部品Aと金属部品Bを接着剤Cで接着する(加熱処理)。
工程4:接着された部品の汚れを落とすために、再び工程1と工程2で行った洗浄を行う。
工程5:コーティング剤Dでコーティングし、乾燥ののち熱処理を行ってコーティング剤を硬化させる。

顧客の要求によって回答は異なる

顧客要求が異なる場合、回答もそれに対応して異なることになります。

例えばRoHS指令物質不使用証明書をくれと言われているのか、chemSHERPAのデータをくれと言われているのかで回答も当然異なります。

今回は、比較的面倒くさそうなchemSHERPAのデータをくれと言われた場合を例に解説します。
ものすごく話を簡単にするために、今回の使用原材料AからEの全てに、chemSHERPAで記載しなければいけない管理物質は入っていないと仮定します。

データの変化を伴う工程はあるか

製品化学物質の情報伝達について(その16)情報伝達と自社工程1にも書きましたが、以前に変換工程 [化学品を成形品に変換する工程共通]第3版公開という記事を書いていますので、そちらも参照してください。

では、部品XについてchemSHERPAデータをくれと言われた場合、どう考えるのか見ていきましょう。

工程1と2

まず、工程1金属部品AとBを洗浄剤Eで汚れを落としますが、その後の工程2で更に洗浄水ですすいで乾燥するので、洗浄剤Eの成分は、金属部品AとBには残りません。

ごくたまーに、工程で使っている洗浄剤Eのデータまで要求する顧客がいると管理人は聞いたことがあるのですが、「残らないものの情報聞いてどうするの?」と思ってしまいます。

工程3

次に工程3で接着剤CでAとBをくっつけるわけですが、入手している接着剤Cのデータは、chemSHERPA-CIでもらっているはずです。加熱によって反応する熱硬化性接着剤なので、○○樹脂、硬化剤△△などと書いてある場合が多いと思います。

では、工程3が終了した後はどうなっているでしょう。少なくとも硬化剤△△は大部分が反応して無くなっているはずです。ですので、部品Xのデータを作る場合、chemSHERPA-CIに書かれていた、硬化剤成分を書き写すことはできません。○○樹脂も正確には○○樹脂から変化しています。
まじめな人は、硬化してしまった接着剤Cの材質を選択する際、接着剤Cのベース樹脂である○○樹脂を選んでいいか迷ってしまうことになります。

管理人ならどうするかって?別に本質的に影響がないなら、”その他樹脂”でも選んどきます(^^;。

工程4と5

工程4は、工程1と2と同一ですので、問題はないと思います。

工程5は、コーティング剤Dでコーティングするわけですが、手法として、今回は部品ごとどぶ漬けしていると仮定します。

取引先からもらえるコーティング剤DのchemSHERPA-CIデータには、有機溶剤もコーティング剤Dの本体の材料も書かれているはずです。

コーティング剤Dは90wt%が有機溶剤なので、実際のコーティング剤Dがどの程度部品X上に残っているのかわかりません。少なくとも有機溶剤は、工程5を行った後は部品X上には残りません。

ここだけは、何とかして部品X上のコーティング剤Dの量を知る必要があります。方法は、いろいろあるでしょうから、皆さんにお任せします。

更に、コーティング剤Dも加熱ののちは、熱硬化した被膜を形成するので、材料納入先からもらったchemSHERPA-CIのコーティング剤D本体に関わるデータは、接着剤Cの場合と同様なことが起きます。

情報伝達には自社製造工程の理解が必要

今まで見てきたように、実際に自分の会社の化学物質の情報伝達を正しく行うには、自社製品(今回の場合は、部品X)の製造工程を認識する必要があります。

ただ、もらったデータを足し合わせればいいというものではありません。

今回は、管理対象物質を全く考えなくても良い単純な場合を考えましたが、管理対象物質が存在する場合は、複雑になる可能性がありますので注意しましょう。