REACH 制限物質(その18):Entry51 SVHCの中の認可物質でもある

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REACH 制限物質(その18)は、Entry51のDiisobutyl phthalate (DIBP); Dibutyl phthalate (DBP); Benzyl butyl phthalate (BBP); Bis(2-ethylhexyl) phthalate (DEHP)です。

いや、一つの物質じゃないんかい!しかも、RoHSでも規制されている4つのフタル酸エステルですね。しかも、これらのすべてがSVHCであり、認可物質です。

Entry51に含まれる物質の基本情報

それでは、Entry51に含まれる4つのフタル酸エステルの基本情報を見ていきましょう。一つのEntryに4つの物質も入れられると書くほう大変だから(;_;)。

化学物質名:Bis(2-ethylhexyl) phthalate (DEHP)
和名:ビス(2-エチルヘキサン-1-イル)=フタラート
化学式:C24H38O4
分子量:390.56 
構造式:
CAS RN:117-81-7
EC No.:204-211-0
別名:フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、ベンゼン1,2ジカルボン酸ジオクチル、DEHP、DOP、Bis(2-ethylhexyl) phthalate、 Di(2-ethylhexy)phthalate、 dioctyl benzene-1,2-dicarboxylate、 Dioctylphthalate
融点:-50℃
沸点:385℃
引火点:215℃

化学物質名:Benzyl butyl phthalate (BBP)
和名:ベンジル=ブタン-1-イル=フタラート
化学式:C19H20O4
分子量:312.36
構造式:
CAS RN:85-68-7
EC No.:201-622-7
別名:フタル酸ブチルフェニルメチル、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸n-ブチル=ベンジル、ブチルベンジルフタレート、1,2-ベンゼンジカルボン酸ブチルフェニルメチル、1,2-Benzenedicarboxylic acid, butyl phenylmethyl ester、BBP、Benzyl butyl phthalate、Butyl benzyl phthalate、n-Butyl benzyl phthalate
融点:‐35℃
沸点:370℃
引火点:196℃

化学物質名:Dibutyl phthalate (DBP)
和名:ジブタン-1-イル=フタラート
化学式:C16H22O4
分子量:278.35  
構造式:
CAS RN:84-74-2
EC No.: 201-557-4
別名:フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ブチル、ベンゼン-1,2-ジカルボン酸ジブチル、1,2-ベンゼンジカルボン酸ジブチルエステル、n-ブチルフタラート、1,2-Benzenedicarboxylic acid, dibutyl ester、Di-n-butyl phthalate、dibutyl benzene-1,2-dicarboxylate、Dibutyl phthalate、Dibutyl-1,2-benzenedicarboxylate、DBP
融点:-35℃
沸点:340℃
引火点:171℃ 157℃(密閉式)の記載もあり

化学物質名:Diisobutyl phthalate (DIBP)
和名:ジイソブチル=フタラート
化学式:C16H22O4
分子量:278.35  
構造式:
CAS RN:84-69-5
EC No.:201-553-2
別名:ジイソブチル=フタラート、フタル酸ジイソブチル、1,2-Benzenedicarboxylic acid, bis-(2-methoxypropyl)ester、Di(isobutyl)-1,2-benzenedicarboxylate、Phthalic acic, diisobutyl ester、DIBP
融点:いろいろな値があるので記載せず
沸点:320℃
引火点:180℃

融点や沸点は、引火点などはDEHP以外、実験条件などによってSDSなども異なった値になっていたりします。

Entry51の物質の危険性は何か

この項目ですが、4つの物質全部についてここに記述していると気が遠くなるので、一番有名であろうDEHPについてだけ記載します。細かいことを言えば違うとは思いますが、他も似たり寄ったりだと思うので。

ECHAのSubstance Infocardによれば、この物質は、生殖能力に損傷を与え、胎児に損傷を与える可能性があるとされています。更には、水生生物に対して非常に有毒であることが確認されています。

日本の職場のあんぜんサイトのSDSによれば、眼刺激、呼吸器への刺激のおそれ、発がんのおそれの疑い、授乳中の子に害を及ぼすおそれ、長期にわたる、又は反復ばく露による臓器の障害のおそれ
も記載されています。

日本においてもこれらのフタル酸エステルは、化審法の優先評価物質だったり、安衛法や化管法などで規制がかかっています。食品衛生法などもそうですね。

どこに使われているか

ECHAのInfocardによれば、欧州域内では年10,000t以上、製造もしくは輸入されているとあります。認可物質なのに製造?っておかしな気もしますが、大部分は輸入によるものなんでしょうね。

この物質はポリーマーに使われると書かれています。それとほかの化学物質を作るために使用されるようです。

日本のCHRIPでは可塑剤と書かれています。大部分がその用途ですからね。

当ブログでも特に今回のEntry 51にあるフタル酸エステルについては、過去に断片的ではありますが、20回くらい関連した記事が書かれています。サイト内検索の窓に”フタル酸エステル”と入れていただければ見つけることができます。色々調べて詳細に書く気力がないので、これらの記事を参考にしてください

制限条件

Entry51の物質群の制限条件は、以下のようなものです。

今回は、フタル酸エステルの書かれている順番も必要なので物質リストから行きます。

The 次のフタレート(もしくは other CAS and EC numbers covering the substance):
(a) Bis (2-ethylhexyl) phthalate (DEHP)
CAS No 117-81-7
EC No 204-211-0
(b) Dibutyl phthalate (DBP)
CAS No 84-74-2
EC No 201-557-4
(c) Benzyl butyl phthalate (BBP)
CAS No 85-68-7
EC No 201-622-7
(d) Diisobutyl phthalate (DIBP)
CAS No 84-69-5
EC No 201-553-2

  1. 本項目の第1欄に記載されているフタル酸エステル類を単独で、または組み合わせて、可塑化された材料の0.1重量%以上の濃度で、物質または混合物として玩具や育児用品に使用してはならない。
    (ここでいう第1欄というのは、上の4つのフタレートが書いてあるブロックのことです)
  2. 玩具や育児用品には、個別に、または本項目の第1欄に記載されている最初の3種類のフタル酸エステル類を混合して、可塑化された材料の0.1重量%以上の濃度で、市場に出してはならない。

    さらに、DIBP は、2020 年 7 月 7 日以降、玩具または育児用品に、単独で、または本項目の第 1 列に記載されている最初の 3 種類のフタル酸塩との組み合わせで、可塑化された材料の重量に対して 0.1%以上の濃度で上市してはならない。
  3. 2020 年 7 月 7 日以降は、成形品に含まれる可塑化された材料の重量に対して 0.1%以上の濃度で、個別に、または本項目の第1欄に記載されているフタル酸エステル類を組み合わせて、市場に出してはならない。
  4. 第3項は、以下のものには適用しない。
    (a)工業用若しくは農業用にのみ使用される物品、又は屋外でのみ使用される物品であって、可塑化された材料が人の粘膜に接触しないこと、又は人の皮膚に長時間接触しないことを条件とする。
    (b)2024 年 1 月 7 日より前に市場に上市された航空機、又は当該航空機の整備又は修理に専ら使用するための成形品であって、当該成形品が当該航空機の安全性及び耐空性のために不可欠であるもの。
    (c)2024 年 1 月 7 日より前に市場に上市された指令 2007/46/EC の範囲内の自動車、又は市場に上市された場合にはいつでも当該自動車の整備又は修理に 専ら使用するための成形品であって、当該成形品がなければ当該自動車が意図した通りに機能しないもの。
    (d)2020 年 7 月 7 日より前に上市された成形品。
    (e)実験室用の測定装置又はその部品
    (f) 以下の範囲内で食品と接触することを意図した材料及び物品。規則(EC) No 1935/2004、または委員会規則(EU) No 10/20111。
    (g) 指令90/385/EEC、93/42/EECまたは98/79/ECの範囲内の医療機器、またはその部品
    (h)指令2011/65/EUの範囲内の電気・電子機器
    (i) 規則(EC) No726/2004、指令2001/82/EC又は指令2001/83/ECの範囲内での医薬品の直接包装。
    (j) 第1項又は第2項の対象となる玩具及び育児用品
  5. 第1項、第2項、第3項及び第4項(a)においては
    (a)「可塑化された材料」とは、以下の均質材料のいずれかを意味する。
    ーポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリウレタン。
    ーシリコーンゴムおよび天然ラテックスコーティングを除く他の任意のポリマー(特に、ポリマーフォームおよびゴム材料を含む)。
    ー表面コーティング, ノンスリップコーティング, 仕上げ, デカール, 印刷デザイン
    ー接着剤、シーラント、塗料、インク
    (b) 「人の皮膚との長時間接触」とは、1日あたり10分以上の継続的な接触または30分以上の断続的な接触を意味する。
    (c) 「育児用品」とは、睡眠、リラクゼーション、衛生、児童への授乳又は児童の吸啜を促進することを目的とした製品を意味するものとする。
  6. 第4項(b)では、「航空機」とは次のいずれかを意味する。
    (a) 規則(EC)第 216/2008 号に基づき発行された型式証明書、又は国際民間航空機関(ICAO)の締約国の国内規則に基づき発行された設計承認に基づいて製造された民間航空機、又は 1944 年 12 月 7 日にシカゴで署名された国際民間航空条約の附属書 8 に基づき ICAO の締約国により耐空証明書が発行された民間航空機をいう。
    (b) 軍用機

ということで、めちゃくちゃ規制の文だなという書き方をしてありますが、結局、2020 年 7 月 7 日以降は、第4項に書かれた(a)から(i)以外のものは、上市禁止になってしまっています。(j)は、第1項と第2項を残すための処置ですからね。

今回は、フタル酸エステルは4つもあるし、制限条件もめんどくさい書き方してあるし、管理人疲れたぞ。

コメント

  1. ケミカル犬 より:

    いつも役立つ情報をありがとうございます。
    エントリー51、弊社製品でもゴム部品をたくさん使っているのですが、ここの項の書き方が大変わかりづらかったので、「4項以外のものには使うなってことでしょ?」と少々乱暴に解釈していたのですが、まずはそれでよかったことがわかり安心いたしました。
    しかしこの付属書の適用除外の書き方、いくらでも悲観的に解釈できるのでいつも悩みます…
    今後ともよろしくお願いいたします。

    • OFFICE KS より:

      ケミカル犬様、コメントありがとうございます。管理人です。
      少しでもお役に立てば幸いです。
      それと、あんまり悲観的にならなくてもよろしいかと。別に取って食われるわけじゃなし(^^)。
       

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