今回の条約、法規いっちょかみ(その19)は、REACH規則から離れて日本の労働安全衛生法関連(実際には、労働安全衛生規則等の一部を改正する省令)の改正のお話です。
労働安全衛生法は、日本の事業所のすべてに関係するのでREACH規則なんかよりずっと関係する人が多い法律です。
先日行われたケミカルマテリアルJapan 2022 ONLINEの化学物質管理ミーティングの中でも何かと話題になっていました。
そもそも今回の労働安全衛生法の改正はいつから施行なの
上にも書きましたが、今回の改正(2022年5月31日公布)は、労働安全衛生法そのものではなく、労働安全衛生規則等の一部を改正する省令というものです。
実際には、条約、法規いっちょかみ(その9)労働安全衛生法にも書いたのですが、この改正前には政令の改正もあり、労働安全衛生法の化学物質に関する管理に関しては、大きく方向転換されています。
その元は、以前の記事にリンクを載せた「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」の報告書にあります。
これら一連の改正は、実際に施行されるのは、2023年(令和5年)4月と2024年(令和6年)4月のものがあります。
何が変わるの?
何が変わるかは、労働安全衛生規則等の一部を改正する省令のHPを見ていただけると分かります。
JEMAIの化学物質管理ミーティングの特設サイトも後1か月程度は残っています。そこにも情報があるので、この2つのリンク先の情報を見てもらえば大体わかると思います。
えっ、ダメ?
管理人何もしてないじゃんと言われそうです(^^;。
ここからは、完全な管理人の個人的意見ですのでそうではないという反論もいくつもあるとは思います。特に化学物質を専門にしてきた人ほどそうかもしれません。ですので、単なる一つの考えとして見てください。
管理人としては今回の改正の最大のポイントは、言葉は悪いですが
親方日の丸の管理から会社自らの管理への大きな方向転換だと思っています。
管理人は、日本人はまじめですので、法律に決められた管理は本当に良く守ると思っています。
労働安全衛生法の化学物質管理は、石綿など製造・使用の禁止されている物質、特化則、有機則などで管理される有害性の高い物質、一定の危険有害性のある物質(SDS発行義務がある)というような形で行われてきました。
しかし、今から10年前に起こった1,2-ジクロロプロパンによる胆管がんの事例をはじめ、このような国が決めてきた物質以外による化学物質による健康被害が非常に多いことが指摘されてきました。それ以外にもいろいろな化学物質災害の8割が規制物質以外だったことが、検討会の報告書に記載されています。
つまり、国によって指定される物質に対しては規制を遵守するがそれ以外の物質についてはなおざりなままの管理がされるという傾向があったのは否めないと考えます。
ところが、化学物質のリスクというのは、まだほとんど正確には明らかになっていないといったほうがいいでしょう。何せ工業材料や日常生活に使用されている化学物質は何万もあります。
今まで知られていないようなリスクが存在するかもしれないのです。胆管がんの件や染料工場での膀胱がんのように。
このようなリスクを回避するためには、国はもちろんどうすればいいのかその手法を教えたり、そのようなことができる環境を整えるための規制を作ることはしなければならないのですが、今までのような、個別物質指定をやるやり方では追いつかないと結論に達したのだと管理人は思っています。
つまり、会社は自分たちの使っている化学物質に対してどのようにしてリスクを回避するのか自ら決めなければならなくなるのです(リスクアセスメントを実施して対策を打つ)。
そのために、化学物質管理者の導入や、教育の強化、健康診断履歴などのリスク低減のための規制が追加されています。
もちろん、リスクが高いと分かっている物質についてある基準に以下に曝露を抑える、など物質に対する必要な規制は残っています。
ですので、今回の改正で、国によるGHS分類で危険性・有害性が確認された全ての物質に対してSDSの発行義務が順次追加されるとなっています。
ですが、実際にはそれだけではなく、それ以外の使用している化学物質に対してもリスクを考え、必要なら有効なリスク回避手段を講じることが、化学物質による健康被害を避けることになるのだと考えます。
免責事項
それと、このシリーズわかり易くするために砕けた表現などを使っていますが、規制にそんなものはあるわけがありません。正確性が欠ける場合があります。
また、REACH規則はかなり面倒な規則なので間違いがあるかもしれません。専門家の方で間違いを見つけた場合は、ご指摘ください。
コメント
化学物質とは関係ないですが、「なおざり」という言葉を初めて聞きました。
勉強になります。
通りすがりの購読者様、コメントありがとうございます。管理人です。
管理人、爺なので普通に使ってしまいました。若い人は使わないのね(^^;。
「おざなり」というすごく意味が近い言葉もあるし、ややこしいかもしれませんね。