どうも管理人です。製品含有化学物質担当になっちゃった人のための超初級化学講座の20回目です。
今回は、今まで数名の方からリクエストやもう少し解説をとリクエストがあった、化学物質の名前に関する解説のお話です。
化学物質の名前に関連するものとして、製品含有化学物質担当になっちゃった人のための超初級化学講座(その3)で数の数え方、製品含有化学物質担当になっちゃった人のための超初級化学講座(その5)で官能基の名前、製品含有化学物質担当になっちゃった人のための超初級化学講座(その13)で異性体の記事を書いていますので、そちらもご参照ください。
化学物質の名前によく出てくるあの数字はなんじゃ
化学物質の解説しているとよく、名前の中に数字が出てくることがあります。
例えば、当ブログでは、REACH 制限物質(その29):Entry38からREACH 制限物質(その34):Entry32に塩素系有機溶剤がずっと書かれているのですが、その中にも数字が書かれている化合物があります。結構単純な構造の化合物なので、説明にはいいかもしれません。
1,1-Dichloroethene
1,1,1,2-Tetrachloroethane
1,1,2,2-Tetrachloroethane
1,1,2-Trichloroethane
これらの化合物は、単純な炭化水素に塩素がいくつか置換されている化合物ですが、その前に数字が書かれています。
これは、エタンもしくはエチレンのどの炭素に塩素が付いているかを表しています。
エタンの場合は、炭素が二つしかないのでどちらから数えても同じになります。
1,1,1,2-Tetrachloroethane であれば、1の炭素に3つの塩素が付いており、2の炭素には1つの塩素が付いていることを示しています。それで、テトラクロロなので合計4個の塩素が付いているということがわかります。
この場合、2,2,2,1-Tetrachloroethaneとは書きません。数字の小さい順番で収まるように書いていきます。
このように書くことによって、この化合物の構造がわかることになります。
一方、 1,1,2,2-Tetrachloroethane の場合は、1の炭素に2つの塩素、2の炭素にも2つの塩素が付いています。それで、同じく4個の塩素が付いているので、1,1,2,2-Tetrachloroethaneとなるわけです。
もう一つ別の例
もう一つ別の例を示しましょう。
REACH 制限物質(その36):Entry73にTrimethoxy(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-tridecafluorooctyl)silaneとかいう訳の分からない化合物が載っています。
化学構造は以下のようです。
この化合物名の最後にあるシラン(silane)は本来SiH4と書かれる化合物です。メタンの炭素部分がシリコンになっているものです。ですが、化学構造を見ると、シランの形跡はなくなっています。
まずTrimethoxyの部分ですが、これは、methoxy基が3つの意味です。構造を見るとSi(シリコン)には3個の-Oー、正確に書けば-O-CH3が付いています。
残りの1個の部分を表すのが、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-tridecafluorooctylなのですが、この場合は、数字的には1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-tridecafluorooctylと表した方が小さく、それでもよさそうです。
ですが、こう書いてしまうと置換しているFの位置が異なっている物質を表すことになります。Siに対して置換していることから、この置換基の炭素鎖はSiに近いほうから順番を振ることなっています。
構造式の1から6までと3から8までの位置は異なりますので、違う化合物を表すことになるのです。
次に tridecafluoro ですが、これは13個のフッ素の意味です。そして最後の octyl は、炭素鎖の数が8つの意味なので、8個の炭素鎖の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8の位置に13個のフッ素が置換しているものが、シラン(silane)の最後の置換基としてあるということになります。
この場合、化学をやっている人は、化合物の名前の文字の羅列だけ見て上の構造式を書くことができます。
あー、でもめんどくさい。
製品含有化学物質担当の人が、そんなことができるようになっても実際にはあまり役に立ちません(^^;。
製品含有化学物質担当になっちゃった人のための超初級化学講座は、いったん終了
今回で、この製品含有化学物質担当になっちゃった人のための超初級化学講座は、20回になりました。
管理人は、数回で終わらせる予定でしたのでずいぶん長く続きました。
ですが、すぐ思いつく内容があまりなくなってしまいました。化学物質の命名法はいくらでもあるとは思いますが、それを主題にすることは本意ではありません。
ですので、この製品含有化学物質担当になっちゃった人のための超初級化学講座は、いったん終了としたいと思います。
こういうことを書いてほしいというまとまったリクエストがあれば、それに基づいて新たにシリーズ化することはできるかも知れません。リクエストがある方は、コメント欄にお願いします。
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