どうも管理人です。製品含有化学物質担当になっちゃった人のための超初級化学講座の16回目です。今回は、ちょっと今までとは異なり分析のお話です。2回くらいに分けるかもしれません。
管理人は、製品含有化学物質管理においては、昔のように何の管理もされていない時と違って、現在は、分析はある物質の含有の有無を決める最終手段だと思っています。
実際分析しろなんて書いてある法規は、事業所において管理する項目にはあっても、製品化学物質については無いと認識しています。
分析手法の標準化
分析法というのは、もちろん測定するものにより測定手法も違うのですが、何の中のものを測るのかどういう状態のものを測るのかなどで、前処理や手順なども異なります。というか、正しい方法で測らないと正確な分析値は得られません。
そのため色々な分野で標準化された方法が作られています。JISなどにも沢山あります。そうしないで、適当に測ると間違った値になってしまいます。
RoHS指令が制定された際に、その制限される閾値が0.1wt%もしくは0.01wt%(Cd)に決められたために、その分析手法の標準化が問題となりました。
現在、電気電子製品中の各種規制に関する分析の標準化は、IEC-62321で扱われています。IECは、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)と言われる、電気電子機器の国際標準化全般を扱っている団体です。
金属元素と有機物を測るための分析方法は異なる
IEC-62321は、電気電子製品中の必要と考えられる元素や化合物を測定する方法ですが、測る元素や化合物によって方法が異なるために、10個以上の枝番をもった測定法の集合体になっています。
- IEC 62321-1:2013 Determination of certain substances in electrotechnical products – Part 1: Introduction and overview
- IEC 62321-2:2021 Determination of certain substances in electrotechnical products – Part 2: Disassembly, disjointment and mechanical sample preparation
- IEC 62321-3-1:2013 Determination of certain substances in electrotechnical products – Part 3-1: Screening – Lead, mercury, cadmium, total chromium and total bromine by X-ray fluorescence spectrometry
- IEC 62321-3-2:2020 Determination of certain substances in electrotechnical products – Part 3-2: Screening – Fluorine, bromine and chlorine in polymer and electronics by combustion-ion chromatography (C-IC)
- ….(途中省略)
- IEC 62321-10:2020 Determination of certain substances in electrotechnical products – Part 10: Polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) in polymers and electronics by gas chromatography-mass spectrometry (GC-MS)
という感じで、延々と並んでいます。
分析法見たって一般の人にはちんぷんかんぷん
この表題を見ても一般の方には何が何だかわからないと管理人は思います。
はじめにと全体像だけで1文書になっていますし、前処理方法だけでも1文書になっています。
測定する対象物としては、鉛、水銀、カドミウム、全クロム、全臭素、フッ素、臭素、塩素、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)、六価クロム(Cr(VI))、フタル酸エステル、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCDD)、多環芳香族炭化水素(PAHs)があり、
一方の測定方法としては、以下のようなものが書かれています。
- 蛍光X線分光法(XRF)
- 燃焼イオンクロマトグラフィ(C-IC)
- CV-AAS
- CV-AFS
- AAS
- AFS
- ICP-OES
- ICP-MS
- ガスクロマトグラフィ-質量分析(GC-MS)
- 比色法
- 熱分解装置/加熱脱着装置を使用するガスクロマトグラフィー質量分析法(Py-TD-GC-MS)
「わかるか!こんなの!」とキレ芸を得意とする芸人さんみたいにツッコミたくなりそうです。
分析を頼む場合
この超入門の次回は、分析方法を軽くだけ紹介しますが、一般の人は測定は専門の分析機関に頼んだ方がいいです。お金は、本当に必要なら仕方ありません。
でも分析って法対応に対してだけ言うなら最終手段です。しかしながら、お客さんの要求なんだよという方もいるかもしれません。
その場合でも、毎年分析を要求してくるようなお客さんは、製品化学物質管理の本質を理解していない可能性が高いと管理人は思います(あくまで個人的考えです)。
それでも分析しなければならない時、ネット検索しているといっぱい分析会社が出てくるけどどこに頼めばいいんだよ、という話になるかもしれません。
一つのスクリーニング方法としては、ISO/IEC17025の”試験所認定”の認証を取っているところは、ある水準は保たれている可能性が高いです。だからと言って100%安心なわけではないですが。
後は、こういうものは世間の評判なども重要な選別要因だと思います。また、値段も一般的な試験機関に比べて異常に安い場合は、ある種疑ってかかった方がいいかもしれません(自治体や公共団体が後ろについている場合は別です)。また、サプライチェーンの人に教えてもらうとか、同業他社でも利害関係にほとんど響かない項目ですから情報共有すべきと思います。
管理人、実は分析していたことがある
管理人、実は会社に新人で入社時に配属された部署は、材料解析をやる部署で化学分析をやらされてました(^^;。
ですので、上に書いた分析手法の内、 CV-AAS、CV-AFS、 ICP-MS以外は、すべて経験があります。もう、ウン十年前の話です、(  ̄- ̄)トオイメ
ですので、やり方なんてすっかり忘れてます。でも、一回も触ったことがない人よりは、多少実感を持って解説できるかもしれません。
コメント
いつも楽しくためになる記事を配信下さり、有難うございます。
早速ですが
「毎年分析を要求してくるようなお客さん」に対してどうお断りを入れるかを
ご質問するのは、コンサルティングになるのでお答え頂けないでしょうか…
弊社ですと「分析日以降、品質に影響を及ぼす変更はございません」
と回答して了解を頂きます。いかがでしょうか。
パンチ様、質問とコメントありがとうございます。管理人です。
質問内容に関しては、
パンチ様の答えで正解だと思います。相手に納得いただけているんであればそれでいいと思います。
[…] 17回目です。今回は、前回予告したように分析手法そのもののお話です。 […]
[…] 例えば、製品含有化学物質担当になっちゃった人のための超初級化学講座(その16)や製品含有化学物質担当になっちゃった人のための超初級化学講座(その17)では、分析手法の解説を […]