2025年1月16日にchemSHERPA HPに、製品含有化学物質の管理および 情報伝達・開示に関するガイダンス「製品含有化学物質管理におけるコミュニケーション(第1版)」が公開されました。(表題が長いよorz。
今回は、この文書が何を目的としてどんな内容なのか見ていきましょう。
製品含有化学物質管理におけるコミュニケーション(第1版)には何が書いてあるのか?
この文書は、製品含有化学物質の管理および 情報伝達・開示に関するガイダンスの中の一つという位置づけのようです。
さてこの文書の名称は、製品含有化学物質管理におけるコミュニケーション(外部コミュニケーション)(第1版)と言います。
書いてある内容として、目次の部分を見てみると
1. 本ガイダンスの位置づけ
1.1 コミュニケーション・情報伝達の重要性と本ガイダンスの作成目的
1.2 本ガイダンスで示す、コミュニケーションと情報伝達
1.3 本ガイダンスの活用方法
2. コミュニケーションとは
2.1 コミュニケーションの目的
2.2 円滑な外部コミュニケーションの実施手順
3. 情報伝達とは
3.1 情報伝達の目的
3.2 円滑な情報伝達の実施手順
となっています。これは、内容を読まないと何が書いてあるかよくわからないですね。
では読み解いていきましょう。この文書は、全8ページと結構短いです。
1. 本ガイダンスの位置づけについて
この部分には、製品含有化学物質(CiP(Chemicals in Products)と略すらしいです)の管理において内部もしくは外部に情報を正しく伝えることが重要と書かれています。当然ですね。
更には、法規制が複雑になってきているので、伝達をする側も受ける側も一定の知識や経験がないと困難となる場合があるとしています。
なので、コミュニケーションの重要性と対応事例が書かれているようです。
1.2 本ガイダンスで示す、コミュニケーションと情報伝達の部分には、コミュニケーションはどういうものか書かれているのですが、管理ガイドラインのコミュニケーションが引用されています。
それで、最後に本書では特に外部コミュニケーションとして発生するリスクについて記する。とあるのですが、いやこれこの部分だけでよくないと思うのは管理人だけ?
1.3 本ガイダンスの活用方法には、たった一文この文書をサポート資料として活用してね、と言うことが書かれています。
2. コミュニケーションとは
2.1 コミュニケーションの目的の部分には、相手側の意図・目的を把握したうえで正確に伝達する必要があると書かれています。
更に、規制の複雑化や改正ににより伝える側受取る側双方で一定の知識がいることや、相手側の意図・目的を理解しないで回答したら調査のやり直しや顧客の信頼を損ねるリスクがあると書かれています。
いやそう言われましても、一定の知識がどの程度のことを言うのかわかりませんが、川中の特に中小企業の場合専任のスタッフも置けない会社が多数ある中で、一定の知識を持てと言われても結構苦しい会社も多いのではないかと思います。
2.2 円滑な外部コミュニケーションの実施手順の部分には、依頼側(主に川中、川下企業)、受け手側(主に川上、川中企業)のコミュニケーション時のリスク例と対応が表になっています。
項目として
- 川下企業(依頼)側コミュニケーションと未実施時のリスク
川下企業の調達基準
製品の含有化学物質情報提供要求
4M変更(材料/設計)情報伝達 - 川上企業(受け手)側コミュニケーションと未実施時のリスク
CiP情報伝達要求(chemSHERP/IMDS等標準様式)
川上企業の納入製品に対する川下企業側独自形式での含有化学物質の情報伝達要求
が挙げられ、リスクの下に書いてあるのは、外部コミュニケーションの項目になります。そして、その未対応時のリスクが書かれているのですが、まあ当たり前のことが書いてあるので、実際の文書を読んでください。
その後に、コミュニケーションリスクの回避手段が上の外部コミュニケーション項目に沿って表として書かれています。
ここも、実際の手段は全てそうできているかは別にしてそうすべきであろうことが書かれています。
3. 情報伝達とは
この項目は、3.1 情報伝達の目的の項目に行く前に、3. 情報伝達とはについて前書きが書かれています。
情報伝達とは、顧客が含有禁止している化学物質やこれから含有禁止をしようとしている化学物質、今後法規制が施行されそうな化学物質に対し、調査を要請し回答を求めることを指す。
とあるのですが、これは全く正しくありません。何考えてんの?と言いたくなるレベルです。例えば、SVHCの情報伝達は、含有禁止をしているわけでは全くありません。
更には、各社において法規制だけでなく今後の情勢を考えてコントロールするために報告させている物質もあります。例えば、IMDSでは銅は、報告対象ですが銅を規制している法律はないはずです。
3.1 情報伝達の目的の項目では、「○○が含有しているか確認して欲しい」などの曖昧な情報では何を持って含有を判断すればいいのかわからないというような例が示されています。
3.2 円滑な情報伝達の実施手順の項目は、なんと業界標準形式の使用推奨が書かれています。
chemSHERPA,IMDS,JAPIA統一データシートが挙げられています。
だだし、この中で世界中で通用するのはIMDSだけで、残りの二つはドメスティックに近いということを忘れてはなりません。
最後に
製品含有化学物質管理におけるコミュニケーション(外部コミュニケーション)(第1版)についてその内容を見てきましたが、書いてあることはどちらかと言うと当たり前のことです。
ところが、現実にはここに書かれている通りにはなっていいないことが散見されます。
管理人が一番問題に思うのは、この製品含有化学物質管理およびそのコミュニケーションに人材を割けない、もしくは人材がいない会社が数多くあるということです。サプライチェーンの問題からして、どこか一社でも不具合が起きてしまえば正しい情報は伝達されません。
そして、製品含有化学物質管理のリスクを会社におけるほかのリスクと比較して大きくないと考える経営層がいることもあり得ます。
大きな企業の場合、人材も人員も確保できるでしょうが、日本の企業数では大部分を占める中小企業では、出来ている会社も多数あるとは思いますが、そうでない会社も多いでしょう。
こういった会社に一定の知識を持ってもらうためには、依頼する特に大手企業は、依頼した先からの質問に答える体制とある種の教育的な役割(わかりやすい説明)も担わざるを得ないのではないかと思います。
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