2023年8月29日に、chemSHERPAデータ作成支援ツールVer.2.08が発表されましたので、chemSHERPA講座をはじめたいと思います。
chemSHERPAとは何なのか?その成立の経緯
chemSHERPAとは何なのかの一番最初のテーマは、その成立の経緯です。
この点に関して言えば、そんなものはどうでもいい、早く内容に入ってくれておいう方もいると思いますが、そのような方は、この節を飛ばして読み進めてください。
製品含有化学物質が本格的に日本の産業界で始まったのは、2000年代です。
2001年に起きた大きな事故に伴い大きく動き出しました。
その後、2003年にELV指令による化学物質規制、2006年にはRoHS指令、2007年にはREACH規則というように欧州の規制は、日本の製造業に大きく製品化学物質に関わる規制が影響を及ぼすようになりました。
これに対応して、自動車業界はIMDSという全世界共通の仕組みを作って対応しましたが、その他の産業界は結構バラバラだったのです。
主に電気電子製品に関する規制に対応しようとするJGPSSI(グリーン調達調査共通化協議会)やREACH規則対応を考えたJAMP(アーティクルマネジメント推進協議会)が少なくとも国内の標準化を目指そうとしましたが、なかなかうまくいかない状態でした。
個社のフォーマットや分析データの要求、不使用証明書(これは今も多く存在します)などいくつのも書類で情報伝達が行われることとなり、SC(サプライチェーン)上では多くの工数が消費されるということになっていました。
一応奇麗に書くと(^^;、これでは、工数的にたまらない、競争力もなくなってしまうということで、何とか統一した情報伝達手段ができないかということで、業界と経済産業省が立ち上げたのが、
「化学物質規制と我が国企業のアジア展開に関する研究会」
というもので、この中で新たな情報伝達スキーム(ようはchemSHERPA)の要件などが議論され、出来上がったのがchemSHERPAです。
このようにして2015年にchemSHERPAのVer.1.0がリリースされました。
つまり、chemSHERPAは、化学物質の情報をSC上で伝達するスキーム(一定の様式)です。
結局、出来上がったchemSHERPAは、JAMPによる成分情報の要素とJGPSSIによる遵法判断の要素を両方持つスキームになりました。どちらかに統一されるということはなかったのです。
これは、川中のメーカーには負担が大きくなってしまう状態になることを意味します。
このようなデメリットもあるのですが、最近はchemSHERPAが普及してきたこともあり、フォーマットの統一によるメリットも感じられると思います。
2019年にVer.2.0がリリースされて以降、chemSHERPAは普及が加速している気がします。
chemSHERPAとは何なのか?その構成要素
chemSHERPAの構成要素に関する記事は、過去にいくつかあります。
これ読んででも良いのですが、ここは、chemSHERPA講座なので再度記載します。
chemSHERPAの構成要素は、基本的に3つです。ただし、その他に1つ会社として持っていなければならないものがあります。
利用ルールがある
chemSHERPAには利用ルールがあります。ようは、このルールを守って情報伝達してねと言うものです。そうしないと会社によって情報伝達に要求するレベルが異なってしまって収拾がつかなくなるからです。特別とんでもないルールが書かれているわけではありません。
情報伝達すべき化学物質のリストを持っている
chemSHERPAは、情報伝達すべき化学物質のリストを持っています。それは、日米欧の化学物質に関する規制や業界標準を元に作られています。ですので、全ての化学物質を情報伝達の対象にしているわけではありません。
このリストは、普通の人は見ることができませんが、次に述べる情報伝達支援ツールに組み込まれているので、困ることはありません。システムなどを作る人は別ですが。
情報伝達するためのデータ作成支援ツールがある
chemSHERPAは、情報伝達するためのフォーマットが決まっています。それは、IEC 62474という電気電子系の国際的な標準化団体が決めたフォーマットに準拠しています。
chemSHERPAには、そのフォーマットにあったデータを作成するための支援ツールが存在します。
一般にchemSHERPAと言う場合は、このchemSHERPAデータ作成支援ツールとそれで作成されたデータを言っている場合も多いようです。
chemSHERPAのデータ作成支援ツールは2種類あり、何を扱うかで使用するツールが異なります。
- chemSHERPA-CIは化学品用で拡張子はshci
こちらは、化学物質そのものや混合物を扱う際に使用されます。 - chemSHERPA-AIは成形品用で拡張子はshai
こちらは、成形品を製造したり、それ以降の組み立て、表面処理などに使用されます。
拡張子のshciとshaiはchemSHERPA独特のもので、普通見かけるものではありません。このためいきなりこの拡張子のファイルが飛んできて困る方もいるようです。
以下に以前の拡張子に関する記事をリンクしておきます。
- 拡張子shai or 拡張子shciが動くソフトは何?
- shaiという拡張子が付いたファイルが開けない:chemSHERPA Tool
- shciという拡張子が付いたファイルが開けない:chemSHERPA Tool
chemSHERPAを使う際は、自社の化学物質管理が求められる
自社の化学物質管理のルールを持っているというのは、chemSHERPAの構成要素そのものではありません。
しかし、利用ルールの中の必須要件として書かれています。
つまり、chemSHERPAで作成されるデータは、会社の化学物質管理のルールに基づいているものでなければならず、会社の承認者の承認を持って出されるものだと認識されるということです。
以上の4つがchemSHERPAの要件になります。詳細については、今後の講座で説明します
chemSHERPA講座1の項目
- chemSHERPAとは何なのか?その成立の経緯
- chemSHERPAとは何なのか?その構成要素
こんな感じで講座が続きます。ご要望があればコメントに頂ければと思います。
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