さて、製品化学物質管理における経験や事例シリーズの第9回目です。
このシリーズは、2002年1月(もしくは、2001年11月or12月)から製品化学物質管理に関わってきた管理人が経験したことや事例を書いていくものです。
今回も、製品含有化学物質の事故TYPE 1の例です。
このシリーズで書いていく事故例は、多少の脚色はしていますが、管理人が過去に経験したものになっています。
事故例の第2回目は、副資材に関わるお話です。
今回の例は、「副資材には要注意」です
起こった事象
皆さんは、ビニタイをご存じでしょうか?
まあ、製造業に関わっている方はたいてい知ってますよね。
今のビニタイは、上の映像にあるようなプラスチックの薄い板の間に鉄線が入っているものが多いと思います。
しかし、2000年代前半までは、このプラスチック部分が円柱状でPVC(塩ビ)でできていたものが結構たくさん使われていました。特に、色々な付属品のケーブルなどをまとめておくには適していたからです。
しかし、このPVCでできたビニタイ、2000年代前半の頃は、XRFなどのスクリーニング用の測定装置で測っても鉛だったり、カドミウムだったりがたっぷり入っていました。
なんで見逃されていたのか
このビニタイは、当然ですが製品の一部として箱に入れられ出荷されていきます。しかしながら、ビニタイは、当時製品の部品構成表であるBOM(Bill Of Materials)には記載されていませんでした。
ビニタイは、副資材として扱われ、ある意味管理対象に入っていなかったのです。このような部材があることは、危険極まりないことでした。
このビニタイなどの件がきっかけで、副資材に相当するものに対する調査がかなり行われました。ポリ袋やビニールテープなどもそうです。
更なる追い打ちが
当然、鉛やカドミウムが検出されたビニタイは、使用禁止になりました。ところが、事態はこれでは収まりませんでした。
当然適正な代替品を見つけて使うようにするのですが、ビニタイなどはどこにでも手に入るものです。例えば、製品のコスト削減の圧力がかかると、より安い会社を求めて調達先を変更することは、ままあることです。
ところが、副資材という性質からあまり管理の重要性が認識されないまま、新たな調達先のものを使用してしまう(未然で止まった場合も含む)ということが1回だけではなく行われ、そのたびに鉛やカドミウムが検出されるという事態になったのです。
あまりにひどいので、ついにはビニタイ自体が使用禁止になってしまいました(^^;。
今回の事象で分かることは何か?
今回の事故例からわかることも色々あると思います。
- 今までまともに管理していなかったものが、規制の対象になったらどう管理するのか決めなければならない
- 社内の情報共有は、まともにいっていたのだろうか、必要な人に情報は共有されていたのか
- そもそも、規制物質が入ってしまう可能性が高い部材は、可能なら使用しないという元から断つという手段も検討する価値がある
- etc…
今回の事例は、管理対象にしてこなかったものに対しての対応の不備の例と言えるでしょう。このような事例は、この事故の例のシリーズで後1回くらい記事にするかもしれません。
そういえば今では、塩ビの丸いタイプのビニタイを見かけることは無くなりました。
コメント
お客さんの禁止物質にPVC(梱包材に使用)というのをちらほら見かけていましたが
こういった経緯があったんですね
禁止物質に関して、事例や理由をそれぞれ聞いたことが無かったので
とても勉強になります。
いつもありがとうございます。
通りすがり購読者様、コメントありがとうございます。励みになります。管理人です。
そうですね、色々過去の事例から決められた禁止要求もあると思います。
ですが、管理人は、それがもうすでに意味がなくなってしまった理由の禁止物質の要求はできるだけないくしていく方がいいとは思っています。
段々形骸化してきますからね。
還暦環境調査員より
先日 まさにタイムリーな調査依頼がありました。
ビニタイ(芯0.4Φ 塩ビ部分4.0MM)について2003年のLOTには、DEHP使われていますか?
という問い合わせでした。
6/9号の動画入りの事を思い出し 営業担当者に「こういう事例があるから」と
伝えました。
ちょうどJAMAシートにて2014年4月にDEHPとDINPへの切替データが保存していたので
それ以前はDEHP含有してるから使用禁止だと伝えました。
客先は補給部品のため廃棄していなかったようでした。
還暦環境調査員様、ご報告ありがとうございます。管理人です。
いや、まだそういうことがあるんですね。びっくりしました。もう20年物のビニタイですね。
フタル酸エステル、ブリーディングしてカチカチになってないのかな。
とにかくお役に立っと用でよかったです。これからもよろしくお願いいたします。