今回は、製品含有化学物質管理の基礎(その9)です。
この記事は、製品含有化学物質管理ガイドライン第4.0版は、お手元にあるという前提で書かれています。
今回は、前回の続きで、製品含有化学物質管理ガイドライン第4.0版の5.5 運用の5.5.5 製造及び保管における製品含有化学物質管理からです。
この部分は、更にに細分化されています。では順番に見ていきましょう。
5.5.5 製造及び保管における製品含有化学物質管理
この項目は、いわゆるものを作る工程とその前後の部分の管理になります。
受入れた材料部品を製造工程に引き渡して製造し、完成したものを梱包して倉庫に保管することになります。
5.5.5.1 製造工程における管理
製造工程における管理は、製品含有化学物質管理であっても品質管理であってもほとんど変わりはありません。
管理基準に基づいて、製造工程を確認して記録を残すことになるのですが、製造が順調に確保されている場合ほとんど間違いは起こりません。
化学物質に関して言えば、化学変化や蒸発など濃度が変化する場合、化学品から成形品に変化する場合は化学物質の濃度変化に注意する必要があります。
ですが、このような変化は製品特性に直接影響するため管理されているのが普通です。最初に工程能力を決める際に濃度範囲を確認しておけば良いと思います。
問題は、定常的にものを作っている場合ではなく、何かしら改善しようとしたり、コストダウンしようとしたり、早く作らなければならなくなったりして、工程に手を加えた場合に起こりがちですので注意しましょう。
そういった時こそ、化学物質についても大丈夫か確認する必要があります。
5.5.5.2 誤使用及び汚染の防止
誤使用及び汚染の防止は、製造工程においては極めて重要です。
特に、規制物質を使用している工程と使用していない工程が分離されていない場合、つまり、規制物質を使用したものとしていないものを同一工程上で製造する場合は、厳しい管理が必要になります。
例えば、樹脂成型工程などがこれに当たります。
一方、規制物質を使用している工程と使用していない工程が別に組まれている場合でも注意は必要です。
このような場合であっても、治具や製造設備などによる汚染や混入が無いか確認する必要があります。
有鉛はんだと無鉛はんだの二つの工程を別に持っている場合などがこれに当たります。
また、製造工程においては、原材料、部品が触れる部分や梱包材などにも注意が必要な場合があります。
5.5.5.3 識別及びトレーサビリティ
この識別及びトレーサビリティも、製品化学物質については、品質管理の場合とほとんど変わるところはありません。
品質管理においても、製造品に対して原材料や部品のLot管理やその紐づけは行われているでしょう。それが、化学物質管理の視点で見てもきちんと追えるかどうかを見ておけば問題ないでしょう。
5.5.6 変更管理
変更管理は、製品含有化学物質においては極めて重要です。特に、材料変更(Material)の場合は確実に新しい材料に関する化学物質情報を入手しなければなりません。
4M変更管理のそのほかの要素、人(Man)、機械(Machine)、方法(Method)が変更されても、化学物質に影響がある場合はあります。
そして、この変更管理は社内だけの問題では無く、供給者や外部委託先などのサプライチェーンにおいての変更も対象にしなければなりません。
また、自ら変更を行った場合は、顧客に通知することも必要です。
実際のところ、特に材料変更の変更管理情報を得られなかった場合にいわゆる事故が起きることは非常に多いです。
そして、最も怖いサイレントチェンジが行われないように管理する必要があります。
5.5.7 製品の引き渡し
この部分の基本は、製品含有化学物質の基準を満たしたものであることを確認したうえで、製品を引き渡すことです。
この際、今までこのガイドラインで説明されてきたような文書もしくは確認履歴をもって判断するの一般的です。実際には、出荷判定会議などで確認することになるでしょう。
製品番号によるトレーサビリティの確保や誤出荷などが無いようになどは、品質管理の基本なので省略します。
このシリーズは、次回で終了予定
今まで続けてきた製品含有化学物質管理の基礎ですが、次回で終了予定です。
資料としてきた製品含有化学物質管理ガイドライン第4.0版には、「6. 製品含有化学物質ガイドラインに基づく評価及び自己適合宣言」という項目が最後にあるのですが、この部分の解説はしない予定です。
その解説をしていると一つのセミナーになっちゃうので(^^;。
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