今回は、製品含有化学物質管理の基礎(その6)です。
今回から、製品含有化学物質管理ガイドライン第4.0版の5.5 運用、つまり最も実際の担当者が管理を実施する際に参考にする部分についての説明になります。
この記事は、製品含有化学物質管理ガイドライン第4.0版は、お手元にあるという前提で書かれています。
5.5 運用
この5.5 運用は、さらに細分化された項目分かれており、
5.5.1 運用の計画及び管理
5.5.2 製品含有化学物質管理基準の設定
5.5.3 設計・開発における製品含有化学物質管理
5.5.4 外部から提供される製品の管理
5.5.5 製造及び保管における製品含有化学物質管理
5.5.6 変更の管理
5.5.7 製品の引き渡し
5.5.8 不適合品発生時における対応
となっています。
これらのプロセスを見るとほとんど品質管理における運用と同じだということがわかります。
以下詳細項目に入りますが、重要と思われる部分のみの解説というか管理人目線の説明になります。
5.5.1 運用の計画及び管理
この部分は、このような取り組みに関するPDCAを行いなさいという一般事項が書いてあるだけです。
5.5.2 製品含有化学物質管理基準の設定
この項目は更に
5.5.2.1 顧客とのコミュニケーション
5.5.2.2 製品含有化学物質管理基準の明確化
に分かれるのですが、どちらも重要です。
5.5.2.1 顧客とのコミュニケーション
色々と項目が書かれていますが、実際には顧客からの製品含有化学物質の情報伝達に起因する項目が多いはずです。
この顧客要求を満たすためには、実際には何を要求しているのか正しく理解しなければなりません。必要に応じて質問しなければならないこともあるでしょうし、この後に述べる製品含有化学物質管理基準に対して反映しなければならない可能性も高いはずです。
更には、顧客が根拠にしている法規制情報などは、本来理解しておいたほうが良いものです。顧客の解釈が正しくないこともあったり、更にはサプライチェーンの途中で必要な情報が抜け落ち、理不尽な要求になってしまっている場合もあるからです。(何でもいいから回答してよ!にはどう対応する?(QA4)、参照)
またこの項目の注記に「情報の伝達には共通化された手段の利用が推奨される」とあります。ですが、情報伝達自体は、授受する二社間で合意すればそれで済んでしまうことです。
共通化された手段が有効なのは、サプライチェーン全体を考えた場合の時です。自動車業界のIMDSや電気電子業界中心のchemSHERPAなどは、そのような考えに基づいて作られています。
現実には、共通化された手段をなるべく用いたほうが、効率化されるので可能な限りそうすることをお勧めします。
また、情報の授受は基本は2社間の事項なので、その間での合意は必要です。
5.5.2.2 製品含有化学物質管理基準の明確化
この項目の中身は、組織で製品含有化学物質管理基準を定めて文書化し維持しなさいということが書かれているだけです。
しかも、その中身についてa),b),c)の3項目が書かれているだけですが、注記が1)から8)まで延々と書かれています。
a),b),c)の実際の中身は、おおよそ法規制要求、利害関係者のニーズなど、組織が必要とみなすものと書かれています。
ですが、実際の担当者の方は、項目や注記を見てもどうやって製品含有化学物質管理基準を定めていいかわからない場合も多いと思います。
基準を作る際に絶対に外せないのが、自社に関わる法規制です。とはいっても、食品や医療・化粧品などを除けば、製品含有化学物質に関する規制は日本においてはそれほど多くありません。
海外において多い製品含有化学物質規制は、実際に守らなければならない人は、その国にいる製造者や輸入者になるわけですが、実際に製品を作るにあたっては、それらを守らなければ実質輸出できないことになるため、自社における管理基準に含める必要があります。
また、直接海外に物を輸出するものを製造していなくても、顧客から海外の規制を守るための要求が川中企業に向かって行われるため、川中より上流企業では、顧客要求が実際に管理基準を決める大きな要素になります。
従って
- 自社が満たすべき法規制(海外を含む)
- 顧客の要求事項
が自社における管理基準においては欠かせないものになります。また、業界標準を満たさないと商売にならない会社は、それを含めることも必要でしょう。
2.の顧客の要求事項は、各社から違う要求が来て全部やってたら大変なんだ!ということはよくあることですね。その際は、ABC分析などを活用しましょう。
次回は5.5 運用の続きになります
次回は5.5 運用の続きで、5.5.3 設計・開発における製品含有化学物質管理からになります。次回でも5.5 運用の項目は終わらないと思います。
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