実は、化学物質管理全般の解説書籍の紹介は、2020年7月に記事にしています。
あれから2年たちました。法的な改正も色々ありましたので現在の製品化学物質管理に有用な書籍を紹介したいと思います。
前回の記事でも書いたのですが、書籍というのは発行時点以降の法改正には対応していないので、いつ発行されたのかを確認しておくことは重要です。
更に、改訂版が出版されて新しい情報が加わることがあります。この際も、改訂版がいつ発行されたのか確認しておきましょう。
はじめての人でもよく解る! やさしく学べる化学物質管理の法律
最初に紹介するのは、「はじめての人でもよく解る! やさしく学べる化学物質管理の法律」林 宏(著) 第一法規 です。
この本の目次は以下のようになっていて、化学物質管理の基本が書かれています。
第1章 イントロダクション -今日、化学物質管理の担当者になった-
1 化学物質とは?
2 なぜ、管理しなければならないのか?
3 化学物質管理に関係する法律とは?
第2章 化学物質管理って何? -化学物質管理の国際的枠組み-
1 法律を理解するために知っておきたいこと
2 サミット
3 条約
4 GHS
5 SAICM
6 化学物質管理規則
7 サプライチェーンの情報伝達
第3章 化学物質管理の業務と法律 -化学物質管理の全体像-
1 概要
2 業務の流れから法令を知る
第4章 規制物質
1 規制物質はどのように決まるか
2 規制物質の動向
更に説明文として以下が特色として書かれています。
〇自社の業務がどのような法令に関係しているのか、初任者にもわかるように解説するため、業務起点で必要な法令を理解することができる。
〇化学物質に関する幅広い法令を把握するため、関連法令の第1条から解説するのではなく、化学物質の管理規則(登録、安全性評価、各国共通の事項等)の仕組み・枠組みといった全体像から解説する。また、化学物質管理の仕組みをフローチャートや図解等を用いてわかりやすく解説するため、時間がなくても手軽に法律の基礎を把握できる入門書となる。
〇各章のページ末尾には、法令の重要事項等をチェックリスト形式で登載するため、複雑な法令でも最低限の法令知識を簡単に確認できる。
いきなり担当者になってしまった時に役に立つ1冊だと思います。
発行は、2020/9/25なので前回の記事の後に発行された本です。比較的新しい本ですね。
製造・輸出国別でわかる!化学物質規制ガイド 2021年改訂版
この本は、第一法規から出版されていて、東京環境経営研究所の松浦先生と杉浦先生が書かれています。
目次は以下の通りなのですが、普通の製造業の方が海外にものを輸出する際に関わってくる化学物質に関する法規がほぼ網羅されており、これ1冊である程度のことが理解できてしまいます。
より詳細な内容が欲しい場合でもこれをとっかかりにすることができます。しかも、この改訂版の発行は2022年3月25日なので、2021年までの規制改正には対応していると思われ、単行本になっているものでは最新の情報が載っています。
目次は以下の通りです。
法令チェックフローチャート
各章に収録されている規制一覧
序 章
第1章 化学物質規制について
・EU:REACH規則
・中国:新規化学物質環境管理登記弁法(中国版REACH規則)
・中国:危険化学品安全管理条例
・米国:有害物質規制法(TSCA)
・米国カリフォルニア州:プロポジション65
・日本:化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)
・日本:化学物質排出把握管理促進法(化管法)
・日本:労働安全衛生法(労安法)
・日本:毒物及び劇物取締法(毒劇法)
・韓国: 化学物質の登録及び評価等に関する法律(化評法)(K-REACH)
・韓国:化学物質管理法(化管法)
・台湾:毒性及び懸念化学物質管理法
・台湾:職業安全衛生法
・インドネシア:危険・有害物質に関する政令
・ベトナム:化学品法
・シンガポール:環境保護管理法
・マレーシア:CLASS規則及びEHS届出・登録制度
・タイ:有害物質法
・フィリピン:有害物質及び有害・核廃棄物管理法
第2章 分類と表示について
・国連:GHS
・EU:CLP規則
・日本:JIS Z 7252/JIS Z 7253
・米国:危険有害性周知基準(HCS)
・アジアの分類基準
第3章 電気電子製品の含有化学物質・規制について
・EU:RoHS指令
・(column)フタル酸エステル類の移行問題について
・中国:RoHS管理規則
・米国カリフォルニア州:RoHS法
・韓国:RoHS法
・タイ:RoHS法
・インド:RoHS法
・ベトナム:RoHS法
・台湾:RoHS法
・シンガポール:RoHS法
・EEU(ユーラシア経済連合):RoHS法
・UAE RoHS法
・(column)その他の国のRoHS法対応の動き
第4章 電気電子製品以外の含有化学物質規制について
・EU:GPSD
・EU:玩具指令
・米国:消費者製品安全性改善法(CPSIA)
・韓国:電気用品と生活用品安全法
第5章 廃棄・リサイクル法について
・EU:ELV指令
・EU:電池指令
・EU:WEEE指令
・EU・米国:包装材規制
・シップリサイクル条約
第6章 新たな規制動向について
・EU:殺生物性製品規則(バイオサイド規則)
・米国:紛争鉱物開示規制
・EU:エコデザイン指令(ErP指令)
・水銀条約
・POPs(ストックホルム)条約
第7章 自律的マネジメントシステム
商品説明には、以下のように書かれており、確かに現時点では最も最新の情報が載っている本です。
各国化学物質規制、電気電子製品の含有化学物質規制、廃棄・リサイクル法などについて国別・規制種別に整理し、理解しておくべきポイントを解説する。現場が抱えている疑問をQ&A形式で事例掲載するほか、化学物質管理の仕組み作りのポイントも解説。韓国版RoHS法・中国版REACH・EU CLP規則改正、各国のPFOA規制など、変化の激しい規制動向を反映した2021年改訂版。
よくわかる 製造業の化学物質管理(改訂2版)
この本は、前回の記事でも紹介しました。発行元はオーム社です。
目次は以下の通りです。
第1章 化学物質の基礎知識
第2章 化学物質の管理と規制
第3章 化学物質のリスク評価
第4章 化学物質のリスク管理と削減手法
第5章 製造業の化学物質管理の実践的アプローチ
第6章 化学物質管理の国際的潮流への対応とその実践的アプローチ
第7章 化学物質規制を製造業の強みに変える
(「chemSHERPA」の日本語表記は,本書中で使用している「ケミシェルパ」ではなく「ケムシェルパ」となりました.)という注記が本の紹介に載っています。
内容紹介には、化学物質管理の入門書 ケムシェルパも解説!とあります。また、以下の内容紹介が載っています。
「製品中に含まれる化学物質」に関する規制の動きが国際的に強まる中で、化学メーカーのみならず、部品メーカー、完成品メーカーがそれぞれ適切な管理をし、情報共有を進めることが求められています。
本書では、主に中小メーカーの品質管理の実務者が化学物質管理の全体の流れを最新のケムシェルパ(chemSHERPA)も含めて、理解できる構成になっています。ゼロから勉強を始める読者に理解ができる内容とし、化学物質の基本的知識・関連用語をていねいに解説し、管理全体の手順を網羅的にまとめています。
この本の良いところは見開きの2ページで一つの項目が解説されているところです。ですので、必要な項目を目次で見て、その項目のページを開くと必要なことがわかります。
それに、実部レベルて必要かどうかは別として、今回紹介する他の本には書かれていない、EVABAT(経済的に実現可能な最適適用可能技術)やQSAR(定量的構造活性相関)などの用語も解説されています。
ただ、改訂2版の発行が、2016年09月24日なので、情報は相当古いので注意が必要です。chemSHERPAについてはVer.upが繰り返されているので、この本の内容では対応できないと思います。
“ケムシェルパ”を活かしたよくわかる規制化学物質のリスク管理
この本は、日刊工業新聞社から発行されており、東京環境経営研究所【監修】/松浦 徹也/杉浦 順/島田 義弘【編著】となっています。
この本も、前回の記事で紹介しました。その際も書きましたが、この本の良いところは、実際の会社(実名入り)の対応方法の事例が載っていることです。要は、他社事例を参考にできるというところです。
目次は以下のようになっています。
第1章 リスクマネジメントの基礎
第2章 chemSHERPA(ケムシェルパ)の使い方
第3章 RoHS(2)指令やREACH規則が求めるリスクマネジメント
第4章 新たな規制物質の動向
第5章 特定有害物質の検査法
第6章 EU輸出企業の対応事例
第7章 マネジメントシステムの統合
商品説明には、以下のような文言があります。
RoHS指令、REACH規則が求める化学物質規制!世界標準を目指す化学物質情報伝達方式「ケムシェルパ」を活かした規制化学物質のリスク管理をやさしく解説。
この本の出版年月は、2017年3月です。
このため、この本におけるchemSHERPAの解説は、すでにかなり古くなっているので、使えない部分も多々あります。
むしろ、REACH規則やRoHS指令の解説、ナノ物質やフタル酸エステルなど考え方、製品化学物質管理のやり方などが役に立つでしょう。
それとなぜか、化学物質の分析方法の解説があったりします。
今、入手するなら
これからまた新しい本も出てくるでしょうが、現時点で特に成形品の製品化学物質管理で有用なのは、最初の二つの書籍でしょう。
それらの本を見ると、東京環境経営研究所の松浦先生をはじめとした著者が大部分を占めており、日本におけるこの分野では、他に専門家がいないのではないかと思えるほどです。
いわゆる化成品や事業所における化学物質管理の本はほかに沢山出版されていますが、こと成形品対応となると少ないのが現状です。
実務で業務をされている方で、まだ何もそういった書籍を持っていない方は、一冊くらい持っていてもというか、もっていたほうが良いでしょう。
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