以前のREACH制限物質のシリーズ以降に加わった制限物質の2回目です。
今回はREACH 制限物質(その71)は、Entry77のですformaldehyde and formaldehyde releasers(ホルムアルデヒドとホルムアルデヒド放出物)です。
Entry77 formaldehyde and formaldehyde releasersの基本情報
では、まずEntry77のformaldehyde and formaldehyde releasersの基本情報を見ていきましょう。
とはいっても、formaldehyde releasersというホルムアルデヒドを放出するものは、沢山あり特定は難しいので、単純にformaldehydeの基本情報ということになります。
化学物質名:formaldehyde
和名:ホルムアルデヒド
別名:DMF、Formyldimethylamineなど
化学式:CH2O
分子量:30.03
構造式:
CAS RN : 50-00-0
EC No.: 200-001-8
融点:-92℃
沸点:約-20℃
ホルムアルデヒドは、通常水溶液で販売されています。いわゆるホルマリンですね。常温では気体です。
ところで、職場のあんぜんサイトのホルムアルデヒドの安全データシートでは、融点と沸点を逆に書いている間違いがありますので注意しましょう。
Entry77 formaldehyde and formaldehyde releasersの危険性何か
ECHAのSubstance Infocardによれば、この物質は、飲み込むと有毒であり、皮膚に接触すると有毒であり、重度の皮膚火傷および眼障害を引き起こし、吸入すると有毒であり、癌を引き起こす可能性があり、遺伝子異常を引き起こす疑いがあり、アレルギー性皮膚反応を引き起こす可能性があるとされています。
更には、この物質は吸入すると致死的であり、深刻な眼障害を引き起こすことが特定されているとあります。
日本の職場のあんぜんサイトによれば、上記の他に、極めて可燃性の高いガスであり、吸入するとアレルギー、ぜん(喘)息又は呼吸困難を起こすおそれ、長期にわたる、又は反復ばく露による中枢神経系、呼吸器の障害、水生生物に毒性、長期継続的影響により水生生物に有害であるとされています。
この物質、危険性のオンパレードですね。
Entry77 formaldehyde and formaldehyde releasersはどこに使われているのか
ECHAのSubstance Infocardによれば、この物質はREACH規則で登録されており、年間10,000トン以上、欧州経済領域で製造または輸入されています。
この物質は、EEAおよび/またはスイスで消毒、獣医衛生としてのしようが承認されています。
さらに、この物質は、EEAおよび/またはスイスで遺体防腐処理、はく製処理への使用が検討されています。
この物質は、消費者用途の以下のような製品に使用されています。:
接着剤およびシーリング剤、コーティング製品、充填剤、パテ、プラスター、モデリング粘土、インクおよびトナー、ポリマー、殺生物剤(例:消毒剤、害虫駆除製品)、燃料、ポリッシュおよびワックス、洗濯およびクリーニング製品、化粧品およびパーソナルケア製品。
屋内使用(例:洗濯機洗浄液/洗剤、自動車ケア製品、塗料およびコーティング剤または接着剤、香料および芳香剤)、屋外使用、放出率の低い長寿命材料(例:金属、木製およびプラスチック製の建築および建築材料)における屋外使用、放出率の低い長寿命材料(例:床材、家具、玩具、建築材料、カーテン、履物、皮革製品、紙および段ボール製品、電子機器)における屋内使用。
その他にも、工業的に他の物質や材料を製造するために使用されたり、加工助剤として利用されたりします。
非常に多種多様なところに使用されている物質と言ってよいでしょう。
制限条件
Entry77 formaldehyde and formaldehyde releasersの制限条件は、以下のようなものです。
- 2026年8月6日以降、附属書14に規定された試験条件下で、成形品から放出されるホルムアルデヒド濃度が以下を超える場合は、2026 年 8 月 6 日以降、成形品として上市してはならない:
(a) 家具及び木材を主成分とする成形品の場合、0,062mg/m3;
(b) 家具及び木製品以外の成形品については、0,080 mg/m3 を超える場合。
第1号は、以下のものには適用されない:
(a) ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド放出物質が、専らその成形品が製造される材料中 に自然に存在する成形品;
(b) 予見可能な条件下で、屋外でのみ使用される成形品;
(c)建築物の外壁と蒸気バリアの外側でのみ使用され、ホルムアルデヒドを屋内空気に放散しな い建築物の成形品;
(d) 専ら工業用又は業務用の成形品であって、そこから放出されるホルムアルデヒドが、 予見可能な使用条件下で一般公衆のばく露につながらないもの;
(e) 第 72 項の制限が適用される成形品;
この項目に関しては、REACH 制限物質(その35):Entry72 を見て欲しいのですが、いわゆるCMR物質への制限です。この中に物質としてホルムアルデヒドも含まれています。
(f) 欧州議会及び理事会規則(EU)No 528/2012(殺生物性製品規則(BPR)) の範囲内の殺生物性製品1;
(g) 規則(EU)2017/745 (医療機器規則)の範囲内の装置;
(h) 規則(EU)2016/425 (個人用保護具規則)の範囲内の個人用保護具;
(i) 規則(EC)No 1935/2004(食品接触材料および製品に関する規則) の範囲内で、食品と直接又は間接的に接触することを意図した成形品;
(j) 中古品。 - 2027年8月6日以降の道路運送車両で、付属書14に規定された試験条件下で、車室内の ホルムアルデヒド濃度が 0,062 mg/m3 を超える場合、市場に出してはならない。
第1号は、以下には適用されない:
(a) 専ら工業用又は業務用の道路運送車両。ただし、これらの車両の内装のホルムアルデヒド濃度が、予見可能な使用条件下で一般公衆の暴露につながる場合を除く;
(b) 中古車。
ここで附属書14というのがあるのですが、これは、ホルムアルデヒドの測定方法が書かれているものになります。
コメント