REACH 制限物質(その14)は、Entry56のMethylenediphenyl diisocyanate (MDI) including the following specific isomersです。
実際には、Methylenediphenyl diisocyanate (MDI)と特定の異性体3種類が指定されています。それらは、2,2’-Methylenediphenyl diisocyanate, 4,4’-Methylenediphenyl diisocyanate, 2,4’-Methylenediphenyl diisocyanateなのですが、面倒なのでこれら全体を表すものとしてMethylenediphenyl diisocyanate (MDI)を使用します。まあ、実際ECHAの書き方もそうなってるし。
Entry56 Methylenediphenyl diisocyanate (MDI)の基本情報
それではまず、Entry56 Methylenediphenyl diisocyanate (MDI)についての基本情報を見ていきましょう。
実際には、Entry56には4つの物質が含まれています。
化学物質名:2,2’-Methylenediphenyl diisocyanate
和名:ジフェニルメタンジイソシアネート
化学式:C17H10N4O4
分子量:250.25
構造式:
CAS RN:2536-05-2
EC No.: 219-799-4
別名:1-isocyanato-2-[(2-isocyanatophenyl)methyl]benzene、2,2′-MDIなど
以下、異性体なので化学式と分子量は同じです。
化学物質名:4,4’-Methylenediphenyl diisocyanate
和名:4,4′-ジイソシアン酸メチレンジフェニル
構造式:
CAS RN:101-68-8
EC No.: 202-966-0
別名:ビス(4-イソシアナトフェニル)メタン、4,4′-MDIなど
化学物質名:Methylenediphenyl diisocyanate (MDI)
和名:メチレンビス(フェニルイソシアネート)
構造式:
CAS RN:26447-40-5
EC No.: 247-714-0
別名:ジフェニルメタンジイソシアネート、METHYLENEBIS(PHENYLISOCYANATE)、MDIなど
化学物質名:2,4’-Methylenediphenyl diisocyanate
和名:2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート
構造式:
CAS RN:5873-54-1
EC No.: 227-534-9
別名:4-(2-イソシアナトベンジル)フェニルイソシアナート、2 4′-METHYLENEBIS(PHENYL ISOCYANATE)、2,4′-MDIなど
融点は、異性体のよってもちろん異なるのですが40℃前後のようです。
構造式を見てあれ?と思った方もいるかもしれません。4,4’-Methylenediphenyl diisocyanateとMethylenediphenyl diisocyanate (MDI)は、同じ構造式に書かれています。これはどういうことでしょうか?
Methylenediphenyl diisocyanate (MDI)は、2,2’とか2,4’など確定した構造式が書かれていません。このような場合、異性体の混合物なんだろうと考えられるのですが、普通に合成すると4,4’-Methylenediphenyl diisocyanateが大部分なのかもしれませんね。管理人、そのあたりのことは疎いので、誰かわかる人コメントいただけると助かります。
Entry56 Methylenediphenyl diisocyanate (MDI)の危険性(概略)
今回は、4つの化合物の危険性を個別にやる気にはならないので、代表してMethylenediphenyl diisocyanate (MDI)の危険性について記述します。
ECHAのSubstance Infocardによれば、この物質は、重篤な眼刺激性を引き起こし、吸入すると有害であり、がんの発生の疑いがあり、長期または反復暴露により臓器に損傷を与える可能性があり、皮膚刺激性を引き起こし、アレルギー性皮膚反応を引き起こす可能性があり、吸入するとアレルギーや喘息の症状や呼吸困難を引き起こす可能性があり、呼吸器刺激性を引き起こす可能性がありますとあり、なんか人に対する危険性はてんこ盛りの感じがしますね。
4,4′-methylenediphenyl diisocyanateについても同様の記述があります。
日本においては、規制上は4,4′-methylenediphenyl diisocyanate (CAS RN 101-68-8)のほうが認識されており、
化審法では、旧第2種監視化学物質、優先評価化学物質
労働安全衛生法では、名称等を表示、通知すべき物質で、リスクアセスメントも必要です。
化管法でも第1種指定化学物質です。
大気汚染防止法、海洋汚染防止法でも規制されています。
また日本の職場のあんぜんサイトのSDSによれば、吸入すると生命に危険とあるので、取り扱いには非常に注意する必要がありそうです。
どこに使われているか
ECHAのSubstance Infocardによれば、この物質はREACH規則に登録されていないため、ECHAはまだ登録書類からこの物質に関するデータを受け取っていませんとあり、またかい!と突っ込まざるを得ません。
4,4′-methylenediphenyl diisocyanateのほうが、情報量が多いようですので、こちらで用途などを確認します。
ECHAのSubstance Infocardによれば、消費者製品では接着剤、シーリング材、コーティング製品に使用されるとあります。成形品についてはデータがないようです。
事業所や現場においては、建築・建設工事、健康サービスで使用されます。また、コーティング剤、インク・トナー、ポリマー、化粧品、パーソナルケア製品の製造にも使用されます。そのほかにもほかの物質を作るもしくはプラスチックを作る際の原料などに使用されます。
日本の職場のあんぜんサイトのSDSによれば、スパンデックス繊維・合成皮革,ウレタンエラストマー・接着剤・塗料の原料とあります。NITEのCHRIPも同様です。
スパンデックス繊維とはなんじゃと思って調べたら、ポリウレタン弾性繊維の一般名称だそうです。伸縮性のいい衣服などに使用されています。
制限条件
Entry57 Methylenediphenyl diisocyanate (MDI)の制限条件は以下のようなものです。
- 2010年12月27日以降は、MDIの重量比0.1%以上の濃度の混合物の構成成分として、一般消費者への供給を目的として以下のことを梱包に確実に実行することなしに供給してはならない。
(a)理事会指令89/686/EEC(*)の要件に準拠した保護手袋が含まれている。
(b) 物質及び混合物の分類、包装及び表示に関する他の共同体の法律を妨げることなく、以下のように目に見えて、読みやすく、かつ明確に表示されている。
ーすでにジイソシアネートに感作されている方は、本製品を使用するとアレルギー反応を起こす可能性があります。
ー喘息、湿疹、皮膚疾患をお持ちの方は、本製品との接触(皮膚接触を含む)を避けてください。
ー本製品は、以下の場合を除き、換気の悪い環境下で使用しないでください。
ー本製品は、適切なガスフィルター付き保護マスク(例:EN 14387規格に準拠したタイプA1)を使用しない限り、換気の悪い環境下では使用しないでください。 - 第1項(a)はホットメルト接着剤には適用されない。
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