今回のREACH 制限物質(その67)は、Entry31のCreosote and Creosote related substances、クレオソート及びクレオソート関連物質です。
このEntryは、展開すると9つの物質が記載されています。しかも1個1個がやたらと長い。
Entry31の基本情報
Entry31のCreosote and Creosote related substancesの基本情報といっても、展開されている個々の物質は異なるので書きようがありません。
Creosote(クレオソート)は、通常コールタールを蒸留して得られる液体(Creosote oil)と木を乾留、蒸留して得られる液体(Wood-tar creosote)の両方の物質を指します。
Entry31のCreosote and Creosote related substancesでは、石炭および/または木材から蒸留その他の方法で得られるタール油と説明されています。
では、展開されている物質を見てみましょう。
化学物質名:Distillates (coal tar), upper; heavy anthracene oil
和名:留出物(コールタール)、高温留分
CAS RN: 65996-91-0
EC No.: 266-026-1
どんな物質なの:コールタールから得られる蒸留物で、おおよそ220℃から450℃ (428°F to 842°F)の蒸留範囲を持つもの。主に3〜4員縮合環芳香族炭化水素およびその他の炭化水素からなる。
化学物質名:Tar acids, coal, crude; crude phenols
和名:-
CAS RN: 65996-85-2
EC No.: 266-019-3
どんな物質なの:コールタール油のアルカリ抽出液を硫酸水溶液などの酸性溶液や炭酸ガスで中和し、遊離酸を得た反応生成物である。フェノール、クレゾール、キシレノールなどのタール酸を主成分とする。
化学物質名:Creosote; wash oil
和名:石炭クレオソート
CAS RN: 8001-58-9
EC No.: 232-287-5
どんな物質なの:瀝青炭を高温で炭化して得られるコールタールの蒸留物。主に芳香族炭化水素、タール酸、タール塩基から構成される。
化学物質名:Low temperature tar oil, alkaline; extract residues (coal), low temperature coal tar alkaline
和名:-
CAS RN: 122384-78-5
EC No.: 310-191-5
どんな物質なの:低温コールタール油から粗コールタール酸を除去するために、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ洗浄を行った後の残渣。炭化水素と芳香族窒素塩基を主成分とする。
化学物質名:Distillates (coal tar), naphthalene oils; naphthalene oil
和名:ナフタリン油
CAS RN: 84650-04-4
EC No.: 283-484-8
どんな物質なの:コールタールを蒸留して得られる炭化水素の複合体。主に芳香族などの炭化水素、フェノール化合物、芳香族窒素化合物からなり、約200℃から250℃(392°F to 482°F)の範囲で蒸留される。
化学物質名:Anthracene oil
和名:アントラセン油
CAS RN: 90640-80-5
EC No.: 292-602-7
どんな物質なの:コールタールから得られる多環芳香族炭化水素の複合体で、蒸留温度範囲は約300℃~400℃(572°F to 752°F)である。主にフェナントレン、アントラセン、カルバゾールから構成される。
化学物質名:Creosote oil, acenaphthene fraction; wash oil
和名:クレオソートオイル
CAS RN: 90640-84-9
EC No.: 292-605-3
どんな物質なの:コールタールの蒸留により生成される炭化水素の複合体で、約240℃~280℃(464°F to 536°F)の範囲で沸騰する。主にアセナフテン、ナフタレン、アルキルナフタレンで構成される。
化学物質名:Creosote oil; wash oil
和名:クレオソート油
CAS RN: 61789-28-4
EC No.: 263-047-8
どんな物質なの:コールタールを蒸留して得られる炭化水素の複合体。主に芳香族炭化水素からなり、かなりの量のタール酸およびタール塩基を含むことがある。200℃から325℃ (392°F to 617°F)の範囲で蒸留される。
化学物質名:Creosote, wood
和名:クレオソート(木クレオソート)
CAS RN: 8021-39-4
EC No.: 232-419-1
どんな物質なの:木質タールから蒸留して得られるフェノール類の複合体。
Entry31 の危険性は何か
Entry31 Creosote and Creosote related substancesの危険性は、全体として何かあるかと探してもすぐには出てきません。
CAS RN: 61789-28-4のクレオソート油について、日本の職場のあんぜんサイトのSDSを見ると、皮膚刺激、目刺激、遺伝子性疾患のおそれの疑い、発がんのおそれ、生殖能又は胎児への悪影響のおそれ、眠気及びめまいのおそれとCMRやその他の危険性がこれでもかと書かれています。
Entry31 はどこに使われているのか
Entry31 Creosote and Creosote related substancesは、調べてみると防腐剤のようなものとして使用されています。
また、職場のあんぜんサイトやNITEのCHRIPの情報から以下のような利用用途が見つかります。
木材防腐・防水剤 (陸上および海水・淡水中の建造物、鉄道の踏切用敷材・スリーパー(枕木)、橋梁・桟橋用デッキ材、電柱、ログハウス、柵、児童公園設備用) 。 海水中コンクリート杭への防汚。 成型用金型の潤滑剤、動物や鳥の忌避薬、殺虫剤、動物浸漬剤、殺菌剤。カーボンブラック原料,木材防腐用,消毒剤。
制限条件
Entry31のCreosote and Creosote related substancesの制限条件は、以下の通りです。
- 物質または混合物が木材の処理を意図している場合、物質または混合物として上市、または使用してはならない。さらに、そのように処理された木材は、市場に出してはならない。
- 第1項の適用除外として
(a) 物質及び混合物は以下を満たす場合に限り、産業施設において、又は労働者の保護に関する共同体 法令の対象となる専門家によって、現場での木材処理に使用することができる。
(i) ベンゾ[a]ピレンを 50 mg/kg (0.005 重量%) 未満の濃度で含有する場合、および
(ii) 水抽出性フェノールを3重量%未満の濃度で含有する場合。
このような物質および混合物は、工業設備においてもしくは専門家によって使用されるものです。
ー20リットル以上の容量の包装材でのみ上市できる。
ー消費者に販売してはならない。
物質及び混合物の分類、包装及び表示に関する他の共同体規定の適用を妨げることなく、供給者は、以下のことを行うものとする。市販前に、当該物質および混合物の包装に、以下のように、見やすく、読みやすく、かつ消えないように表示することを保証しなければならない。
「工業用設備または専門家による処理にのみ使用すること」
(b) (a)に従って工業設備または専門家によって処理された木材で、初めて市場に出回るもの、または現場で処理されたものは、専門的かつ産業的な用途に限って使用することができる。
例えば、鉄道、送電・通信、フェンス、農業用(樹木の支柱など)、港湾・水路などでの使用。
(c) 2002 年 12 月 31 日以前に項目 31 (a) から (i) に掲げる物質で処理された木材で、再利用のために中古市場に出されるものについては、第 1 項の上市の禁止は適用されない。 - 第2項(b)及び(c)の処理済木材は、使用してはならない
ー用途にかかわらず、建築物の内部で使用すること
ー玩具
ー遊び場
ー公園、庭園、屋外のレクリエーション・レジャー施設など、皮膚と頻繁に接触する恐れのある場所
ーピクニックテーブルなどのガーデン家具の製造
ー以下の製造、使用、再処理のためのもの:
ー栽培目的の容器
ー人および/または動物が消費するのを目的としたものの原材料、中間製品、最終製品と接触する可能性のある包装材
ー上記の物品を汚染する可能性のあるその他の材料
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