REACH SVHC:追加分だけゆっくり解説(22)です。
今回は、第28次SVHCの二つ目、2,2′,6,6′-tetrabromo-4,4′-isopropylidenediphenolです。
こう書くとどんな化合物なんだと思いますが、有名な臭素系難燃剤TBBAのことです。
第28次SVHC 2,2′,6,6′-tetrabromo-4,4′-isopropylidenediphenolの基本情報
では、まず 基本情報を見てみましょう。
化学物質名:2,2′,6,6′-tetrabromo-4,4′-isopropylidenediphenol
和名:2,2’-ビス(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジブロモフェニル)プロパン (NITE CHRIPから)
別名:Tetrabromobisphenol A、テトラブロモビスフェノールA、4,4′-イソプロピリデンビス(2,6-ジブロモフェノール)、2,2-Bis(3,5-dibromo-4-hydroxyphenyl)propane、TBBA、TBBPAなど
化学式:C15H12Br4O2
構造式:
分子量:543.87
CAS RN:79-94-7
EC No.: 201-236-9
融点:178-181 °C
沸点:316 °C
2,2′,6,6′-tetrabromo-4,4′-isopropylidenediphenolの危険性は何か
ECHAのSubstance Infocardによれば、調和的分類および表示において、この物質は水生生物に非常に有毒であり、長期的な影響を及すとあります。
また、REACH登録において企業がECHAに提供する分類では、この物質が癌を引き起こす疑いがあることが特定されています。
厚生労働省の職場のあんぜんサイトのSDSによれば、
吸入すると有害、発がんのおそれ、生殖能又は胎児への悪影響のおそれ、授乳中の子に害を及ぼすおそれ、水生生物に非常に強い毒性、長期継続的影響によって水生生物に毒性
とあります。
この物質がSVHCになった理由は、発がん性 (Article 57 a)です。
2,2′,6,6′-tetrabromo-4,4′-isopropylidenediphenolの使用用途はどこか
ECHAのSubstance Infocardによれば、この物質は、欧州域内で10,000~100,000t/y生産もしくは輸入されています。
この物質は、一般消費者用製品のポリマーに使用されています。
この物質は、放出が意図されていない複雑な成形品:機械、機械装置、電気/電子製品(例:コンピュータ、カメラ、ランプ、冷蔵庫、洗濯機)に含まれる可能性があります。この物質は、材料をベースとした製品で見つけることができます:プラスチック(例えば、食品包装と貯蔵、玩具、携帯電話)。
工業用としては、他の物質を製造する場合に使われることがあります。
この物質は、放出率は低いですが、含まれている製品から環境に放出されます。
一方、日本のCHRIPにおいては、使用用途を見ると難燃剤となっています。
日本においては、令和6年4月1日施行の安衛法の政令改正によって、名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物(ラベル表示・SDS交付義務対象物質)になります。
この物質は、まだまだ生産使用されている物質です。その点は、注意しておきましょう。
コメント
28th SVHCに含まれたTBBAについて一件ご教示いただけませんでしょうか。
反応型の臭素系難燃剤 臭素化エポキシ樹脂(CAS No.68928-70-1)は今回の規制対象ではないと考えてよろしいのでしょうか
にしかわ様、ご質問ありがとうございます。管理人です。本名で投稿していただいていましたので、当方で修正させていただいています。
今回の28次SVHCで指定されているのは、CAS number:79-94-7です。TBBAを骨格に含む反応タイプの化合物はほかにも存在しますが、当局が知らないとも思えません。
ですので、規制対象は、CAS number:79-94-7の物質のみと考えます。
ご回答いただきありがとうございます。
echaのページでTBBAのExamples of use(s)として
As a reactive flame retardant and as an additive flame retardant
と、添加型だけではなく反応型の難燃剤も用途として挙げられていたため、万が一を危惧しておりました。
追伸、名前修正いただきありがとうございました
にしかわ様、コメントありがとうございます。
もちろん最終判断は、当局や司法にあるので絶対はないのですが、内容を見て物質としてCAS number:79-94-7以外も含まれるとは通常考えにくいですよね。