今回は、REACH SVHC:追加分だけゆっくり解説(8)です。
前々回のREACH SVHC:追加分だけゆっくり解説(6)では、Dioctyltin dilaurate, stannane, dioctyl-, bis(coco acyloxy) derivs., and any other stannane, dioctyl-, bis(fatty acyloxy) derivs. wherein C12 is the predominant carbon number of the fatty acyloxy moietyがSVHCに加わったことだけ書きました。
今回はその展開されている物質の二つ目、stannane, dioctyl-, bis(coco acyloxy) derivs.です。
第24次SVHC stannane, dioctyl-, bis(coco acyloxy) derivs.の基本情報
では、まず基本情報から行きましょう。とは、言ってみたもののこの化合物、ほとんど情報が出てきません。derivsとあるので、誘導体の集まりでしょうから分子量や構造式も書きようがありません。また、物理的な性質も定数としては書けないです。
化学物質名:stannane, dioctyl-, bis(coco acyloxy) derivs.
CAS RN:91648-39-4
EC No.:293-901-5
ということで、基本情報もないという感じです。
でもこれだけだと何なんだかさっぱりわからないということになってしまいます。大体、stannaneってなんだよ。このstannaneとはSnH4というスズの水素化物のことです。で、次がdioctyl-ですから、オクチル基が2個ついているということで、SnH4の二つの水素をオクチル基に置換された構造を持っていることになります。Sn(C8H17)2という構造を持つことがわかります。最後はbis(coco acyloxy)ですが、このうちbisは2の意味ですからcoco acyloxyが2個、SnH4の残りの2個に置換していることになります。
coco acyloxyとはなんじゃということになると思うのですが、これはココナッツのacyloxy(R-CO-O-という構造を持つ官能基)ということになるのだと思います。何せココナッツオイルの成分の約50%はラウリン酸です。(この段落の説明は、完全には自信がないのですがこうでも解釈しないと何のことやらわかりません。)
またついでにですが、REACH SVHC:追加分だけゆっくり解説(6)に解説した部分で残っているany other stannane, dioctyl-, bis(fatty acyloxy) derivs. wherein C12 is the predominant carbon number of the fatty acyloxy moietyの部分は、
REACH SVHC:追加分だけゆっくり解説(7)で解説したDioctyltin dilaurateのように、Sn-O-CO-Rの構造を持ちR=(CnH2n+1)がついたものの混合物になるのだと思います。で、nの数は規定されていません。ただし、このSVHCには脂肪酸部分の炭素鎖が12(つまりラウリン酸のようなもの)が優位でなければならないという制限は付きます。
stannane, dioctyl-, bis(coco acyloxy) derivs.の危険性は何か
stannane, dioctyl-, bis(coco acyloxy) derivs.は、ECHAのSubstance Infocardによれば、の物質は長期または反復暴露により臓器に損傷を与え、生殖能力または胎児に損傷を与える疑いがあり、水生生物に長期的な有害な影響を及ぼす可能性があるとされています。
もっともECHAのデータくらいしか他に情報が少ないです。
どんなところに使われるのか
stannane, dioctyl-, bis(coco acyloxy) derivs.がどんなところに使用されているのかの情報は、ほとんど見当たりませんでした。ECHAのページを見てもよくわからないし。
可能性があるとしたら、REACH SVHC:追加分だけゆっくり解説(7)で解説したDioctyltin dilaurateと同じような用途ですかね。他に知っている人がいたら教えてください。
第24次SVHCの追加物質分の解説はお終い
ということで、第24次SVHCの追加物質分の解説は今回でお終いです。2物質のはずなのに4回もかかってしまった。では、また5か月後くらいに追加されるまでこのシリーズは、更新されません。
コメント