最近、PFASに関する国内の動きとして、「化審法のペルフルオロオクタン酸(PFOA)関連物質等の措置について」という記事を書きました。
更には、それ以前に「PFASに対する総合戦略検討専門家会議第4回までが終了しました」という記事も書いています。
そして、以下に示すQ&A集に書いてあるのですが、今まで、国では科学的な知見が十分ではなく、健康への明確な影響は不明としてきました。
しかしながら、水質目標値を超えるPFOS、PFOAが各地で検出され、各種メディアで騒がれてきたせいか、ようやく環境省も重い腰をあげて、PFASへの対応を行うようです。
今回は、それを見ていきましょう。
PFASに対する総合戦略検討専門家会議から提出された資料について
環境省では、2023年1月から7月まで4回の「PFASに対する総合戦略検討専門家会議」が実施されました。
そこで提出された主な資料が、以下の二つです。
これら内容と管理人の感想は、「PFASに対する総合戦略検討専門家会議第4回までが終了しました」の記事に記載しています。
2023年7月以降の調査によるPFASの検出
PFASに対する総合戦略検討専門家会議は、2023年7月にいったん終了していますが、その後も次々と各地で暫定目標値を大幅に超えたPFASの検出がなされています。
こうなってくると、さすがに何らかの手を打たないと問題ですし、リンク先を見てもらえばわかるように、各自治体では注意喚起を行い、さらには予算をかけて対策を実施しようとするところもあります。
このような状況ですので、この記事が書かれる少し前に環境省からいくつかの情報が出されました。
PFASに関する委託研究
国内でのPFASに対する不安が高まっている、さらに国際的にもPFASの規制が強化されつつあることから、環境省は新年度から大学など3つのグループに委託して健康影響の研究を本格的に始めることになりました。
今回行われる研究は、いずれも令和6年度~8年度の3年間の予定となっています。
以下のページを参考にしています。
「PFASに関する総合研究」令和6年度新規課題の採択決定について
兵庫医科大学 医学部
題名は、「免疫疾患におけるPFASの免疫抑制及び免疫促進影響の解明に向けた実験的検証」
研究の題名って何が何だか、、、。
この研究は、マウスによる動物実験となっています。
暫定目標値程度の濃度レベルを含むPFASの曝露条件を設定し、マウスを用いた動物実験を行い、免疫抑制(例えばワクチンの効果を低下させる)及び免疫促進(例えばアレルギー症状を悪化させる)の影響を評価する。
また、PFOS、PFOA、PFHxS 以外のPFASのうち数種類について、培養細胞への曝露実験による遺伝子発現解析を行い、PFASに共通又は物質特異的な免疫毒性関連遺伝子の検出を試みる。
となっています。
国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター
題名は、「PFASsの規制に関わる優先付け及び合算評価に資する遺伝子発現解析による有害性評価法の開発」
この研究は、PFASの分子毒性メカニズムの研究ですが、やはり動物実験によって行われます。
複数のPFASに関して動物を用いた反復曝露実験を行って、その影響を全遺伝子の発現変動として定量し、PFOAを含む約160種の化学物質曝露に関する延べ8.5億の遺伝子発現情報で構築されているデータベースを用いて、PFASの有害性に関わる分子シグナルを明らかにし、用量作用関係を含む毒性予測を行う。
このようにして、PFASの分子毒性メカニズムを解明していき、PFAS分類法の構築、リスク評価の優先順位付け及び複合影響評価が進むのが期待されている。
これは、後工程はコンピュータサイエンスかな。
北海道大学 環境健康科学研究教育センター
題名は、「毒性影響・毒性発現機序・種差を考慮したPFASの包括的な健康影響解明:環境疫学ー毒性学融合研究」
この研究は、約2万人の出生コホート「北海道スタディ」を基盤とした疫学研究と、培養細胞等を用いた毒性学研究を組み合わせて、PFASの健康リスクを評価する。
疫学研究では、約700名の胎児期・学童期・思春期の約30種類のPFAS血中濃度と質問票や生体試料等から、発育、免疫、肝・脂質代謝の影響を評価する。
毒性学研究では複数あるいは単体のPFASを曝露した魚類胚及びヒト・マウス・ラット由来細胞の網羅的遺伝子発現解析等により、毒性発現メカニズムを推定する。
この二つの研究を行って、環境疫学と毒性学の知見を繋ぐPFASの包括的な影響評価の結果は、複数あるPFASのヒト健康リスク解明に資する科学的知見とする。
この最後の研究課題は、わかり易いと思われるのか各種ニュースで取り上げられています。
例えば、
しかしながら、全て取り上げているのは、疫学研究のほうばかりで、毒性学研究については全く言及されていません。
実際には、両方の研究が無いとPFASのヒト健康リスク解明には至りません。きちんと報道してほしいものです。
夏を目途に具体的な除去技術をまとめた指針を作る
もう一つは、夏を目途に具体的な除去技術をまとめた指針を作るというものです。
Yahoo newsによれば、具体的な除去技術をまとめた指針に作るにあたって、国内では企業や大学などで除去技術の開発が進んでいますが、現場での実証機会が少なく実用化が遅れているということです。
水源を持つ各自治体の協力のもと、公募型の事業で研究者の参加を募るやり方で実証実験を行うとあります。
他のニュースサイトでは、「環境省は市町村と連携し、企業や大学に実験場所を提供して除去技術の開発を後押しするオープンイノベーションを本格化させる」という表現が使われています。
これは、既に汚染がわかっており、現在実際の除去が行われている、もしくはこれから行われる地方自治体において、企業や大学に実験を提供し、実際の現場で実験してもらうという形になります。
残念ながら、どこの市町村で実験が行われる予定なのかは確認できませんでした。ニュースで具体的に書かれていた除去方法は、活性炭を使用するものです。
まあ、ごく普通の除去技術ですが、色々条件の最適化などがあるので大変だとは思います。
指針を作る際にもう一つの要素として、除去技術に対する最新の研究事例・海外の事例を参考にする、というのもあります。
いずれにしろ夏ごろには、文書として提出されるでしょうから見てみたいものではあります。
国内のPFASに関する動向も注視していこうとは思います
今回は、国内のPFASに関する動向について記事にしました。このブログでは、国内のPFASに関してはそれほど注視してきませんでした。
ですが、化審法での規制や実際の汚染の話など、実際には、海外の規制より身近なのかもしれません。
どれだけできるのかわかりませんが、国内のPFASに関する動向にも注視していこうとは思います。
コメント
どぉも。
この問題は長い時間をかけて、こちらのサイトを賑わす要素を備えていると思います。
実際にはPFASでない物質(テフロン)を使用している場合や、フライパンに塗布しているPFAS成分が及ぼす影響度が不明な状況ではありますが、口に入るものには『紅麹』ではありませんが、敏感にならざるを得ないと思います。
—–ネットに掲載してある、民間企業の見解—–
【PFASが体に及ぼす影響】
『焦げ付かないフライパンの表面に塗布しているPFASは、免疫力の低下や低出生体重児、コレステロール値の上昇、腎臓がん、前立腺がんは、影響の確実性が高い毒性を持っています。』
ステップ様、コメントありがとうございます。
最近コメントが無かったので、泣きそうなくらいうれしい管理人です。
PFASが体に及ぼす影響は、毒性はある可能性は高いですが、どの程度なのか、どの程度の量から影響があるのか、またメカニズム何なのかは検証できていない状態だというのが今のところの管理人の見解です。
ちゃんと調べてないだけなのかもしれませんが。
自社製品を売るために不必要に不安をあおるのも良くないですし、健康影響が確認できていないからほおっておくというのも良くないでしょう。
可能な限り情報は追おうと思います。
EPAやEUの定義だとテフロンなんかのPFTEもPFASですね
数多ある有機フッ素物質のうち明確に毒性が分かっている物質は少数ですが、「よく分からんから全部まとめて規制しちゃえ」ってのがEUのスタンスみたいです
日本の業界団体であるFCJなんかは「特定PFAS」という用語を広めようとしてますが、どうなることやら
にしかわ様、コメントありがとうございます。管理人です。
毒性が明確に分かっているのが少数の物質であることは、そのようですね。もっとはっきり言えば沢山種類があるので試験ができていないと言いうのが正確なのだと思います。
EU側のスタンスと業界として個別規制にしたいというスタンスには考え方に大きな違いがありますね。
しかしながら、今の社会が回らなくなるような規制は適用除外されると管理人は思っています。
人間不便な方にはなかなか戻れないですし、今後の発展も期待できないでしょうから。