循環経済(circular economy)と化学物質管理(その11)

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循環経済(circular economy)と製品化学物質管理の11回目です。

今回も、循環経済対応の製品含有化学物質管理 ディスカッションペーパーの続きで、最後の部分4.6サーキュラリティ向上のための製品含有化学物質管理<対象プロセス:5>の部分です。

対象プロセスに関しては、循環経済(circular economy)と化学物質管理(その7)に書かれた図をご覧ください。

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4.6 サーキュラリティ向上のための製品含有化学物質管理<対象プロセス:5>

この中には、以下の4項目があります。
4.6.1 人と環境に配慮した資源循環(化学物質の在り方)
4.6.2 製品含有化学物質管理 シナリオ
4.6.3 化審法 化審法第一種特定化学物質を例とするリサイクル材リスクの考え方

ここの部分は、ある意味資源循環と化学物質管理をどう整合していくかという本質の部分の議論がなされている項目です。

従って、問題認識についても結構長々と書かれています。

例えば、EUにおけるSCIPデータベースに言及し、懸念物質の情報を消費者やリサイクラーに公開しているとしている。

しかしながら、ここでの問題認識でも言及されているが、情報があったとしても懸念物資を循環経済でどう扱ったり、どう排除するのかなどの具体的方法は難しいと言える。

循環経済の中で、高懸念物質をどう取り扱うのか、またどう抑制するのかは非常に困難であると言わざるを得ない。実際、個々の化学物質にどのようなリスクがあるかの評価は進んでおらず、毎年SVHCは付かされる状況にあるからである。

4.6.1 人と環境に配慮した資源循環(化学物質の在り方)

製品化学物質管理の観点で、従来の情報伝達は主に製品までの部分に重きが置かれ、最終製品の情報は最下流とみなされていたが、リバースサプライチェーンでは最上流と言うことになる。

そして、いわゆる原材料が最下流となり従来の概念とは正反対になることに注意したい。

このため再生材の活用においては、いわゆる従来の製品化学物質管理における規制物質の情報だけでなく、再生利用のための情報が付け足されない限り解は無いことになる。

従ってこの項目には、従来のサプライチェーンとリバースサプライチェーンの連携が必須だと書いてあるのだが、上記理由によってそう簡単なことではないと管理人は考えている。

欧州においては、製品のエコデザイン規制(ESPR)が成立し、2024年7月から施行されている。ここにおいてデジタルプロダクト(DPP)による情報共有が進められている。
欧州が一歩進んでいるように見えるが、実際の再利用や資源循環に利用されるようになるにはまだ長い道のりである。

資源の少ない日本においても効率的な技術開発が必要だが、同時に経済性の壁が立ちはだかることになる。経済性の壁は、欧州も同様である。

4.6.2 製品含有化学物質管理 シナリオ

この項目には、循環経済と製品含有化学物質管理に着目した5つのシナリオが提示され議論されている。

  1. 有害な製品含有化学物質の除去のみに焦点を当てるシナリオ
  2. 資源の効率性より有害な化学物質の除去に重視するシナリオ
  3. 資源の効率性と有害な化学物質の除去を同等に扱うシナリオ
  4. 資源の効率性を有害な化学物質の除去よりも重視するシナリオ
  5. 資源の効率性のみに焦点を当てるシナリオ

この文書の中では、1や5はありえないとしている。1では、プラスチックはほぼリサイクルできないし、5では規制との矛盾が生じる。

従って2.3.4.のいずれかからの選択になるのだが、この文書では、2.もしくは3.を推奨している。

2.は製品寿命に鑑み、有害物質の含有量が少ないプラスチックのみをリサイクルする、3.は廃棄製品の選別によりリサイクルの用途を限定するということに重きが置かれたシナリオとなっている。

現実には、リサイクルするものによって変わってくると考えられる。

4.6.3 化審法 化審法第一種特定化学物質を例とするリサイクル材リスクの考え方

この項目は、更に細かい項目に分かれており

4.6.3.1. 対象法規・材料
4.6.3.2. リサイクル材の製品含有化学物質管理の考え方 

となっています。この項目は、全体として資源循環における製品含有化学物質管理の考え方を特定の法規(例としては化審法第一種特定化学物質)に基づいて考えてみようとしている

4.6.3.1. 対象法規・材料

対象法規は、chemSHERPAの管理対象物質にもなっている化審法第一種特定化学物質を例としている。そして考える対象材料は耐久消費材等に使用されるプラスチック樹脂としている。

4.6.3.2. リサイクル材の製品含有化学物質管理の考え方

まず、第一種特定化学物質を用途で分類して、農薬や臭素系難燃剤が多いとしている。

殺虫剤や農薬はほぼ樹脂に使用しないため、第一種特定化学物質の中で考える物質として、難燃剤や撥水剤、可塑剤など16種類を挙げている。

次にこれらの物質が指定された日と耐久消費財の平均使用年数を比較している。
規制以前に製造された製品には、これらの物質が入って得いるリスクがあり、使用年数との比較により、10-15年もしくはそれ以上の期間リスクが継続するとしている。

しかしながら、リサイクルに回ってくる期間は製品の平均使用期間以降は徐々に割合は減ってくるがなかなか0にはならない。

更に、文献を引用して第一種特定化学物質のPBDEの指定日(テトラ~ぺプタBDEとDecaBDEの二つの指定日がある)とPBDEの含有量と比較している。

そこでは、DecaBDEの指定年(2018)から1~3年後経過後採取のサンプルでも1000ppm程度のPBDEが検出される場合があると書いてあるのであるが、平均使用期間を考えればそれは当たり前と考えられます。

また、実際にはDecaBDEの指定年(2018)から1~3年後に製造されたものからもPBDEが検出される可能性もあります。

化審法は、成形品になったものへの輸入禁止などの規制は個別指定されているために、これらの物質を使用していても既に成形品状態になってストックされているもの使用して製品を製造販売しても違反にはなりません。

さらに言えば、いわゆる家電リサイクル法で排出される4品目の重量は2021年度で約60万t強なのですが、家庭からの一般ごみの総排出量は2021年度で4095万t(リサイクル率約20%)、産業廃棄物の排出総量は2020年度で3.7億t(再資源化率54%)となっています。

循環経済は、現実には長い道のりと言うか、現時点では不可能な理想論に近いですが、それに向かって意識を変えるということが重要なのでしょう。

循環経済(circular economy)と化学物質管理は今回で終了

循環経済(circular economy)と化学物質管理は今回で終了です。

化学物質のリスクをどの程度取るかということに依存するのですが、国内においても海外においても現在の化学物質の法規制を杓子定規に適応すると、色々な矛盾が起こるのは事実と思いますので、その辺りも今後考える必要があるのでは?というのが管理人の個人的意見です。


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