循環経済(circular economy)と製品化学物質管理の6回目です。
今回は、ISO 59000シリーズの現在まで発行されている規格のうち、まだ解説していなかったISO 59020:2024 Circular economy — Measuring and assessing circularity performance (循環型経済 – 循環パフォーマンスの測定と評価)のお話です。
では行って見ましょう。
ISO 59020:2024 Circular economy — Measuring and assessing circularity performanceには何が書かれているのか?
では、実際にISO 59020:2024 Circular economy — Measuring and assessing circularity performance (循環型経済 – 循環パフォーマンスの測定と評価)に何が書かれているのか見たいところですが、いつものように規格は買っていないので、目次と周りの情報から推論するしかありません。
1.Scope (適用範囲)から見ていきましょう。
ここは、Read Sampleで読むことができます。
このScopeには、非常に重要なことが書かれていています。と言うのも、この文書にどういうことが書かれているか書いてあるからです。
それによれば、この文書は、定義された経済システムを測定・評価し、特定の時点での循環性パフォーマンスを決定するための要求事項を規定し、組織に指針を与えるとあります。
そして、測定と評価が何で行われるのかや、境界の決め方や指標の選択、データ処理、解釈などの一連の手続き枠組みを提供するとあります。
更に、このフレームワークは、地域、組織間、組織から製品レベルまで、経済システムの複数のレベルに適用可能である、とも書かれています(嘘つけ!、すいません、管理人の心の声が漏れました(^^;)。
そして、補完的手法のリストも提供しているとあります(多分附属書のことなんだろうな)。
いやーこれが本当なら、ものすごい文書です。
目次から書いてある内容を見てみる
いつも書かれている、イントロや用語の定義などは飛ばして、本体部分の目次を見てみましょう。この文書は、循環パフォーマンスの測定と評価と言うだけあって、結構細かいことが書かれているような目次構成になっています。
項目数も多く、目次だけでもかなり長いです。
- 4 循環性の測定と評価の原則
- 4.1 循環経済の原則
- 4.2 循環性の測定と評価の原則
- 4.2.1 一般
- 4.2.2 適切な境界線の確保
- 4.2.1.1 一般
- 4.2.2.2 空間的スケール
- 4.2.2.3 時間的スケール
- 4.2.3 意味のある結果の確保
- 5 循環性のパフォーマンスの測定と評価の枠組み
- 5.1 枠組みの導入
- 5.2 適用文脈
- 5.3 第1段階:境界線の設定
- 5.4 第2段階:循環性の測定とデータ収集
- 5.5 第3段階:循環性の評価と報告
- 6 境界の設定
- 6.1 測定対象システム
- 6.2 循環性の測定と評価の目標と範囲の決定
- 6.3 対象システムのすべての資源の流入と流出の定義
- 6.4 時間的境界の設定
- 6.4.1 一般
- 6.4.2 時間的境界
- 6.4.3 測定期間
- 6.4.4 定期的モニタリング
- 6.5 異なるレベルにおけるシステムの視点
- 6.5.1 地域レベル
- 6.5.2 組織間レベル
- 6.5.3 組織レベル
- 6.5.4 製品レベル
- 7 循環性測定とデータ取得
- 7.1 循環性測定分類法
- 7.2 循環性指標の紹介
- 7.3 循環性測定のための指標の選択
- 7.3.1 中心的な循環性指標
- 7.3.2 フロー測定を支援する追加指標
- 7.3.3 持続可能性の影響測定と評価を可能にする指標
- 7.4 指標と価値
- 7.5 循環性指標の集計
- 7.6 データ取得
- 7.6.1 データ取得の手順
- 7.6.1.1 一般
- 7.6.1.2 ステップA:着目するシステムを分解する
- 7.6.1.3 ステップB:低レベルのデータ要件を特定する
- 7.6.1.4 ステップC.データソースからデータを取得する
- 7.6.1.5 ステップD: ステップD:データを正規化し、ルールとカットオフ値を適用する
- 7.6.1.6 ステップE:情報が完全であるかどうかをチェックする
- 7.6.2 取得データの一般要件7.7 文書化
- 7.6.1 データ取得の手順
- 8 循環性の評価と報告
- 8.1 循環性の基準の評価
- 8.2 循環性のパフォーマンスを評価するためのステップ
- 8.3 ステップ1:測定結果のレビュー
- 8.4 ステップ2:価値と影響の評価
- 8.4.1 一般
- 8.4.2 経済的価値
- 8.4.3 経済的、環境的、社会的価値の保持
- 8.4.4 資源価値の付加
- 8.4.5 資源価値の回収
- 8.4.6 環境および社会的影響に関する比較可能性
- 8.4.7 環境比較可能性
- 8.4.8 社会比較可能性
- 8.4.9 経済比較可能性
- 8.5 ステップ3:利害関係者、ユーザー、対象者へのコンサルテーション
- 8.6 ステップ4:循環性能評価結果の文書化と報告
- 8.6.1 利害関係者に対する透明性
- 8.6.2 情報の検証可能性
- 8.6.3 書式
- 8.6.4 有害物質に関する報告
付属資料A 中核となる循環指標とデータ測定
- A.1 概要
- A.2 資源流入
- A.2.1 資源流入循環指標
- A.2.2 資源流入の平均再利用率(X)
- A.2.3 資源流入の平均再生利用率(X)
- A.2.4 資源流入の平均再生利用率(X)
- A.3 資源流出
- A.3.1 資源流出循環性指標の概要
- A.3.2 業界平均に対する製品または材料の平均寿命
- A.3.3 流出由来の実際の再利用製品および部品の割合(X)
- A.3.4 流出由来の実際のリサイクル材料の割合(X)
- A.3 .5 生物循環における流出量(X)の実際の再循環率
- A.4 エネルギー
- A.4.1 エネルギー循環性指標の概要
- A.4.2 再生可能エネルギーである消費エネルギーの平均割合
- A.5 水循環性指標
- A.5.1 水循環性指標の概要
- A.5 .2 流入循環源からの取水割合
- A.5.3 水質要件に従って排出された水の割合
- A.5.4 水の再利用または再循環の割合(現場または内部)
- A.6 経済
- A.6.1 経済的循環性指標の概要
- A.6.2 物質の生産性
- A.6.3 資源集約度指標
附属書B 追加指標
- B.1 概要
- B.2 追加的な資源流入指標
- B.2.1 追加的な資源流入指標に関する考察
- B.3 追加的な資源流出指標
- B.3.1 追加的な資源流出指標の概要
- B.3.2 流出物の設計再利用可能率(%)
- B.3.3 流出物の設計リサイクル可能率(%)(X)
- B.4 追加的なエネルギー指標
- B.4.1 追加的なエネルギー指標の概要
- B.4.2 残余資源、非再生可能資源および非回収可能資源の流出物から回収されたエネルギーの割合
- B.4 .3 エネルギー原単位
- B.5 追加的な水指標
- B.5.1 追加的な資源流出指標の概要
- B.5.2 流出水からの栄養塩抽出
- B.5.2.1 全般
- B.5.2.2 指標方法A
- B.5.2.3 指標方法B
- B.5.3 水原単位
- B.6 追加的な経済指標
- B.6.1 経済指標の概要
- B.6.2 循環性に関連する収入シェア
- B.6.3 純付加価値
- B.6.4 質量あたりの価値
- B.6.5 資源生産性
- B.6.6 真の進捗指標
附属書C 補完的手法
- C.1 一般的事項
- C.2 補完的手法及び選択基準
- C.2.1 一般的事項
- C.2.2 システムレベルとの整合性
- C.2.3 システム境界との整合性
- C.2.4 専門家の能力
- C.3 測定及び評価のための国際基準
- C.4 ガイダンス手法を伴う国際基準
- C.5 国際機関(国連など)が推進する手法
- C.6 地域又は特定の国際機関が推進する手法
- C.7 材料特性仕様書及びASTM規格
附属書D 循環型経済とSDGs
- D.1 持続可能な開発への貢献
- D.2 循環型経済とSDGsの間の一般的概要
- D.3 循環型経済とSDGsの間の直接的及び間接的関係
- D.4 循環性指標と関連するSDGsの目標及び指標の例
- D.4.1 一般的事項
- D.4 .2 SDGs 3: 良好な健康と福祉
- D.4.3 SDGs 6: 清潔な水と衛生
- D.4.4 SDGs 7: 手頃でクリーンなエネルギー
- D.4.5 SDGs 8: 適正な労働と経済成長
- D.4.6 SDGs 11: 持続可能な都市とコミュニティ
- D.4.7 SDGs 13: 気候変動対策
- D.4.8 SDGs 14: 水面下の生活
- D.4.9 SDGs 15: 陸上の生活
付属資料F さまざまな種類のデータ
- F.1 前景データと背景データ
- F.2 特定のデータと汎用データ
- F.3 メタデータ
付属資料G 基本的なシステム計算と集計に関するガイダンス
- G.1 基本的なシステム計算の概要
- G.2 同様のシステムを合計、平均、または比較に集計する
- G.3 部分的なシステムをより大きなシステムに集計する
付属資料H 図解による例
- H.1 一般的な例
- H.2 飲料容器メーカーの例
- H.3 小規模食品企業の例
- H.4 精密工具メーカーの例
- H.5 システム境界の数値
この目次を見ると循環パフォーマンスの測定と評価ってここまでやるの?と言うのが管理人の率直な感想です。下手するとLCAより大変です。
LCAはいろんな指標があるものの、経済指標は無いので良いかどうかは別にして科学的です。しかしながら、循環経済は、経済指標がないことには始まらないと思うのですが、それは社会情勢において変化します。附属書Aに書かれている経済指標もその通りです。
その時の相場で変わるので、ある期間の評価でしかないことになります。そして、国のシステムによっても異なります。
島国で資源のない日本と大陸の一部で資源を保有している中国、資源はあってもインフラのないアフリカのでは同じような内容を評価しても結果は変わるでしょう。そしてそれで良しとする以外にパフォーマンスの測定と評価はありえません。
プロセスが正しければ良しとするのでしょうがどう意味があるのでしょう?管理人には良く解りません。いつものようにPDCAがきちんとしていればいいとでもいうのでしょうか?。
ISO 59000シリーズは、見直しがすぐに始まるとのことですので成り行きを見るしかないのではと思います。
次回は、ようやく次の文書に移れそうです
ここまでで、ISO 59000シリーズを見ることは、一旦終了しようと思います。次回からは、ようやく最後に見てみようと思っていた循環経済対応の製品含有化学物質管理 ディスカッションペーパーを見ることが出来そうです。
しかし、管理人、11月は21日、22日の化学物質管理ミーティングが終わるまで、かなり忙しいのです。
ブログの更新は、週に1回程度になるでしょう。
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