以前のREACH制限物質のシリーズ以降に加わった制限物質の2回目です。
今回はREACH 制限物質(その72)は、Entry78のsynthetic polymer microparticles(合成ポリマー微粒子)です。
Entry78 synthetic polymer microparticlesの基本情報
では、まずEntry78のsynthetic polymer microparticlesの基本情報ですが、これは、合成ポリマー微粒子の物理的形状で決まってしまっているので、ほとんど書くことがありません。
synthetic polymer microparticlesの定義も制限条件に書いてあります。
Entry78 synthetic polymer microparticlesの危険性何か
ECHAのSubstance Infocardによれば、この物質は、調和された分類はなく、製造業者、輸入業者、川下ユーザーによるこの物質の危険有害性の通知もないとあります。
まあ、それはそうですよね。今までとは異なるタイプの危険有害性なので。
Entry78 synthetic polymer microparticlesはどこに使われているのか
synthetic polymer microparticles(合成ポリマー微粒子)
制限条件
Entry78 synthetic polymer microparticlesの制限条件は、以下のようなものです。この制限条件を訳す際は翻訳ツールをかなり使っているので完全に正確ではない可能性があります。正確には英文をお確かめください。
しかし、このEntryは最初にsynthetic polymer microparticlesの定義が書かれています。
合成ポリマー微粒子:
固体であり、以下の両方の条件を満たすポリマー:
(a)粒子中に含まれ、粒子の少なくとも1重量%を構成する、または粒子上に連続的な表面コーティングを形成する
(b) (a)で言及される粒子の少なくとも1重量%が、以下の条件のいずれかを満たす:
(i) 粒子のすべての寸法が5mm以下である
(ii) 粒子の長さが15mm以下であり、長さと直径の比が3より大きい
以下のポリマーはこの指定から除外される:
(a)自然界で行われた重合プロセスの結果であり、抽出されたプロセスとは無関係なポリマーで、化学修飾物質でないもの
(b) 付録15に従って証明された分解可能なポリマー
(c) 付録16に従って証明された、溶解度が2g/Lを超えるポリマー
(d) 化学構造中に炭素原子を含まないポリマー
ここから先が、上で定義されたsynthetic polymer microparticles(合成ポリマー微粒子)に対する制限になります。とはいってもまたまた定義が書かれていたりします。
- 合成ポリマー微粒子が、それ自体として、又は求められる特性を付与するために存在する場合は、0.01 重量%以上の濃度で混合された物質として上市されてはならない。
- 本項目では、以下の定義を適用する:
(a)「粒子」とは、輪郭が明確な物理的境界を有する、単一分子以外の微小な物質をいう;
(b) 「固体」とは、液体または気体以外の物質または混合物をいう;
(c)「気体」とは、50℃において300kPa(絶対圧)を超える蒸気圧を有する物質または混合物、または20℃において101.3kPaの標準圧力で完全に気体である物質または混合物をいう;
(d) 「液体」とは、以下のいずれかの条件を満たす物質または混合物をいう:
(i) 物質または混合物が、50 °C において 300 kPa 以下の蒸気圧を有し、20 °C および 101,3 kPa の標準圧力において完全に気体ではなく、101,3 kPa の標準圧力において 20 °C 以下の融点または初期融点を有する;
(ii) 物質または混合物が、米国材料試験協会(ASTM)D4359-90「材料が液体か固体かを決定するための標準試験方法」の基準を満たす;
(iii) 物質又は混合物が、1957 年 9 月 30 日にジュネーブで締結された「道路による危険物の国 際輸送に関する欧州協定(ADR)」の附属書 A の第 2 部 2.3.4 章に記載されている流動性試験(ペネト ロメーター試験)に合格している;
(e)「メークアップ製品(化粧品)」とは、人体の特定の外部部分、すなわち、表皮、眉毛及びまつ毛に接触させることを意図して、専ら又は主としてその外観を変化させることを目的とする物質又は混合物をいう。 - 本項目で対象とする合成高分子微粒子の濃度が、利用可能な分析方法または付属文書によって決定できない場合、第1項の濃度限度への準拠を検証するためには、少なくとも以下の大きさの粒子のみを考慮するものとする:
(a) すべての寸法が5mm以下の粒子については、いずれの寸法も0.1μm;
(b) 長さが15mm以下で、長さと直径の比が3より大きい粒子に対し、長さが0.3μm。 - 第1項は、以下の物質の上市には適用されない:
(a) 工業の事業場で使用するための物質、それ自体または混合物としての合成ポリマー微粒子;
(b) 指令 2001/83/EC の範囲内の医薬品および欧州議会および理事会規則 (EU) 2019/6 の範囲内の動物用医薬品(1);
(c) 欧州議会および理事会規則(EU) 2019/1009の範囲内のEU肥料製品(2);
(d) 欧州議会および理事会規則(EC) No 1333/2008の範囲内の食品添加物(3);
(e) 欧州議会及び理事会規則(EU)2017/746の範囲内の機器を含む体外診断用医療機器(4);
(f) 規則(EC) No 178/2002の第2条にいう食品であって、本項の(d)に該当しないもの、及び同規則の第3条(4)に定義される飼料。 - 第1項は、以下の合成高分子微粒子を、それ自体又は混合物として上市する場合には適用されない:
(a) 意図された最終用途において使用説明書に従って使用される場合、環境への放出が防止されるよう、技術的手段により含有されている合成ポリマー微粒子;
(b) 合成ポリマー微粒子であって、意図された最終使用中に、その物理的性質が恒久的に変更され、そのポリマーが本項目の適用範囲から外れるもの;
(c)意図された最終使用中に固体マトリックスに恒久的に組み込まれる合成ポリマー微粒子。 - 第1項は、以下の用途について以下のとおり適用する:
(a) 2029 年 10 月 17 日から、香料のカプセル化に使用する合成ポリマー微粒子;
(b) 2027 年 10 月 17 日から、規則(EC)No 1223/2009 の附属書 II から VI の前文の(1)(a)に定義される「洗い流し用製品」について、当該製品が本段落の(a)に該当する場合、または研磨剤として使用する、すなわち角質除去、研磨または洗浄のための合成ポリマー微粒子(「マイクロビーズ」)を含む場合を除く;
(c) 2035年10月17日から、規則(EC)No 1223/2009の附属書IIからVIまでの前文の(1)(e)に定義されるリップ製品、同規則の附属書IIからVIまでの前文の(1)(g)に定義されるネイル製品、および同規則の適用範囲内のメイクアップ製品については、本項の(a)または(b)に該当するか、マイクロビーズを含む場合を除く;
(d) 2029年10月17日から規則(EC)No 1223/2009の附属書IIからVIまでの前文の(1)(b)に定義されるリーブオン製品については、本項の(a)または(c)に該当する場合を除き、;
(e) 2028 年 10 月 17 日から、規則(EC) No 648/2004 の第 2 条(1)に定義される洗剤、ワックス、ポリッシュ、およびエアケア製品;
(f) 2029年10月17日から、欧州議会及び理事会規則(EU)2017/745の範囲内の「機器」(5)については、それらの機器にマイクロビーズが含まれていない限り;
(g) 2028年10月17日から規則(EU) 2019/1009の第2条(1)に定義される「肥料製品」で、同規則の適用範囲に含まれないもの;
(h)2031年10月17日から欧州議会及び理事会規則(EC)No 1107/2009の第2条(1)に規定される植物保護製品(6)、及びこれらの製品で処理された種子、並びに欧州議会及び理事会規則(EU)No 528/2012の第3条(1)項(a)に規定される殺生物製品(7)
(i)2028年10月17日から(g)または(h)に該当しない農業・園芸用の製品について;
(j)2031 年 10 月 17 日から、人工のスポーツ用舗装に使用する粒状充填材。 - 2025年10月17日以降、第4項(a)の合成ポリマー微粒子の供給者は、以下の情報を提供しなければならない:
(a) 合成ポリマー微粒子の環境への放出を防止する方法を川下産業ユーザーに説明する、使用および廃棄に関する説明書;
(b) 以下の記述: 「供給される合成ポリマー微粒子は、欧州議会及び理事会規則(EC)No 1907/2006 の付属書 XVII のentry78 で規定された条件に従う」;
(c) 物質または混合物中の合成高分子微粒子の量または濃度に関する情報;
(d) 物質又は混合物に含まれるポリマーの特定に関する一般的な情報であって、製造者、川下 の工業用ユーザー及びその他の供給者が、第 11 項及び第 12 項に規定される義務を遵守す るためのもの。 - 2026年10月17日以降、第4項(e)の合成ポリマー微粒子を含む製品の供給者は、また、2025年10月17日以降、第4項(d)および第5項の合成ポリマー微粒子を含む製品の供給者は、合成ポリマー微粒子の環境への放出を防止する方法を説明する使用および廃棄に関する説明書を、専門家である使用者および一般公衆に提供しなければならない。
- 2031年10月17日から 2035年10月16日まで、合成ポリマー微粒子を含む第 6 項(c)の製 品の供給者は、以下の声明を提供しなければならない: 「この製品にはマイクロプラスチックが含まれています。」ただし、2031年10月17日以前に上市された製品については、2031年12月17日まではその記載は不要である。
- 第 7 項、第 8 項及び第 9 項の情報は、明瞭に視認でき、読みやすく、かつ消えない文字、又は第 7 項及 び第 8 項の情報に関して適切な場合にはピクトグラムの形で提供されなければならない。テキストまたはピクトグラムは、合成ポリマー微粒子を含む製品のラベル、包装、または添付文書に、あるいは第7項の情報については安全データシートに記載しなければならない。テキストまたはピクトグラムに加えて、供給者は、その情報の電子版にアクセスできるデジタルツールを提供してもよい。第 7 項、第 8 項および第 9 項に従って、使用および廃棄に関する指示をテキストの形で提供する場合、当該加盟国が別段の定めを しない限り、物質または混合物が上市される加盟国の公用語で提供しなければならない。
- 工業用地でプラスチック製造の原料として使用されるペレット、フレーク、粉末の形態の合成高分子微粒子の製造業者及び産業用の川下ユーザーは2026年以降、工業用地で合成高分子微粒子を使用する合成高分子微粒子のその他の製造業者及びその他の産業用の川下ユーザーは2027年以降、毎年5月31日までに以下の情報を当庁に提出しなければならない:
(a) 前年のカレンダー年における合成高分子微粒子の用途の説明;
(b) 合成ポリマー微粒子の個々の使用ごとに、使用されたポリマーの特定に関する一般的情報;
(c) 合成高分子微粒子の個々の使用ごとに、前年度に環境に放出された合成高分子微粒子の推定量。
(d) 合成高分子微粒子の個々の使用ごとに,第4項の(a)に規定された適用除外への言及。 - 2027 年以降、第 4 項の(b)、(d)及び(e)、並びに第 5 項で言及されている合成高分子微粒子を含 む製品を、専門家ユーザー及び一般消費者向けに初めて上市する供給者は、毎年 5 月 31 日までに、以下の情報を当 庁に提出しなければならない:
(a) 前カレンダー年に合成ポリマー微粒子が上市された最終用途の説明;
(b) 合成ポリマー微粒子が上市された各最終用途について、前カレンダー年に上市されたポリマーの同一性に関する一般的情報;
(c) 合成ポリマー微粒子が上市された各最終用途について、前カレンダー年に環境に放出された合成ポリマー微粒子の量の推定値、それには輸送中に環境に放出された合成ポリマー微粒子の量も含むものとする
(d) 合成ポリマー微粒子の各用途について、第4項の(b)、(d)もしくは(e)または第5項の(a)、(b)もしくは(c)に規定された適用除外に言及すること。 - ECHAは、第11項及び第12項に基づいて提出された情報を加盟国が利用できるようにする。
- 合成ポリマー微粒子を含む製品の製造業者、輸入業者及び川下産業ユーザーは、所轄当局の要請に応じて、製品に含まれる本項目の対象となるポリマーの識別情報及び製品中のポリマーの機能に関する具体的な情報を提供しなければならない。ポリマーの特定情報は,ポリマーを明確に特定するのに十分なものでなければならず,少なくとも,該当する場合には,附属書Ⅵの2.1~2.2.3及び2.3.5,2.3.6及び2.3.7に規定する情報を含まなければならない。川下産業ユーザーが情報を入手できない場合,川下産業ユーザーは,所管当局からの要請を受理してから7日以内に,その供給者に要請しなければならず,また,その要請を遅滞なく当局に通知しなければならない。第2号の要請を受けた供給者は、要請された情報を30日以内に川下産業ユーザーに提供するか、又は要請した管轄当局に直接提供しなければならない。供給者が川下産業ユーザーに情報を提供する場合、川下産業ユーザーはその情報を遅滞なく管轄当局に転送しなければならない。供給者が当局に直接情報を提供する場合、当該川下産業ユーザーに遅滞なくその旨を通知しなければならない。
- 分解性又は溶解性を理由に合成高分子微粒子の指定から除外されると主張するポリマーを含む製 品の製造業者、輸入業者及び川下産業ユーザーは、所轄当局の要請があれば、遅滞なく、それらのポリマーが付 属書 15 に従って分解性であること、又は該当する場合、付属書 16 に従って溶解性であることを証明する情報を提供しなけ ればならない。
- 第1項は、2023年10月17日以前に上市された、合成ポリマー微粒子の単独または混合物の上市には適用されない。ただし、第1項のサブパラグラフは、第6項に掲げる用途の合成高分子微粒子の上市には適用されない。
(1) Regulation (EU) 2019/6 of the European Parliament and of the Council of 11 December 2018 on veterinary medicinal products and repealing Directive 2001/82/EC (OJ L 4, 7.1.2019, p. 43).
(2) Regulation (EU) 2019/1009 of the European Parliament and of the Council of 5 June 2019 laying down rules on the making available on the market of EU fertilising products and amending Regulations (EC) No 1069/2009 and (EC) No 1107/2009 and repealing Regulation (EC) No 2003/2003 (OJ L 170, 25.6.2019, p. 1).
(3) Regulation (EC) No 1333/2008 of the European Parliament and of the Council of 16 December 2008 on food additives (OJ L 354, 31.12.2008, p. 16).
(4) Regulation (EU) 2017/746 of the European Parliament and of the Council of 5 April 2017 on in vitro diagnostic medical devices and repealing Directive 98/79/EC and Commission Decision 2010/227/EU (OJ L 117, 5.5.2017, p. 176).
(5) Regulation (EU) 2017/745 of the European Parliament and of the Council of 5 April 2017 on medical devices, amending Directive 2001/83/EC, Regulation (EC) No 178/2002 and Regulation (EC) No 1223/2009 and repealing Council Directives 90/385/EEC and 93/42/EEC (OJ L 117 5.5.2017, p. 1).
(6) Regulation (EC) No 1107/2009 of the European Parliament and of the Council of 21 October 2009 concerning the placing of plant protection products on the market and repealing Council Directives 79/117/EEC and 91/414/EEC (OJ L 309, 24.11.2009, p. 1).
(7) Regulation (EU) No 528/2012 of the European Parliament and of the Council of 22 May 2012 concerning the making available on the market and use of biocidal products (OJ L 167, 27.6.2012, p. 1).
この他にREACH規則の付録15と付録16には、この項目のための
付録15 エントリー78 ー分解性の証明のための規則
付録16 エントリー78 ー溶解性の証明のための規則
があるのですが、必要な方は自分で読んでください(とても訳す気にならない)。
このEntry 78への感想
管理人、このマイクロプラスチックの制限を読んで訳していて、これってここに入るべきものなの?という素朴な疑問が浮かんでいます。
今まで加えられてきた制限物質とは明らかに危険性の原因が異なると思うのですよね。そして、化学的性質として特定できないです。まあ、タトゥーインクなどもあるのですが、化学的性質がその根拠になっています。
なんとなくですが、これに対しては別の規制にしておいた方が後々楽な気がするのですけどね。
これで、最近追加された制限物質に関する追加の記事はおしまいになります。またしばらくして、制限物質が追加されてきたら書くかもしれません。
コメント
chemSHERPAの改訂の際にアナウンスの必要が有るかどうかを確認しましたところ、
JAMP事務局より以下の回答を得ました。
「マイクロプラスチックについては、粒子形状の規制であって物質そのものの
規制でないことや、現状の書式では正確な伝達が難しいなどの理由から、当
面の間chemSHERPAの管理対象外とすることとしました。
(chemSHERPA説明書 P35に説明記載)」
ということのようです。
パンチ様、コメントありがとうございます。管理人です。
chemSHERPAにとってはそうでしょうね。物理的形状の話なんで難しいと思います。
chemSHERPAは、情報伝達の手段に過ぎないので、全然完全なものではありません。