今回も、「SDSの情報などに基づくリスクアセスメント実施義務」です。というか、前回の労働安全衛生法関連の規則改正について(5)では、ほどんど何も進んでませんでしたからね。
では行ってみましょう。
化学物質のリスクアセスメントは、いつやるのか?どんな体制でやるのか?などの疑問について
この点に関しては、
化学物質による労働災害防止のための新たな規制について
~労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第91号(令和4年5月31日公布))等の内容~
のページにある、関係通達等の公示の施行通達にある
「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針の一部を改正する指針」について(令和5年4月27日付け基発0427第3号)[PDF:351KB]
に詳しく書かれています。
今回の改正では、リスクアセスメントはSDSによる伝達義務のある物質については必須になっているので、以前よりかなり実施に関することが詳しく書かれています。
以下の解説は、意訳ですので正確には上記の通達を読んでください。
実施体制について
安全管理者又は衛生管理者がいる場合は、その人たちにリスクアセスメントの実施を管理させなければなりません。
製造業は、ある一定規模(50人以上)になれば安全管理者は必ず置かねばならないので、普通はいますよね。
いや、うちは50人以下だからいねーよ!と言われても、労働安全衛生法関連の規則改正について(5)に書いたように、リスクアセスメントをやらなくていいことにはなりません。
そして、化学物質管理者を選任して、リスクアセスメント等に関する技術的事項を管理させなければなりません(安全管理者等がいればその管理の下で)。
安全衛生委員会などが設置されている場合は、そこで、リスクアセスメントに関することを審議しないといけません。
また、労働者に対して化学物質管理の実施状況を共有して意見を聴取する機会を設けて、リスクアセスメント実施決定段階で参画させなければいけません。
この他にもリスクアセスメントを実施する際は、化学物質や作業環境の専門家とか他の有識者も参画させろとか、出来ない場合は外部の専門家を活用しろとか書いてあります。
リスクアセスメントはいつ実施するのか?
じゃあ、いつリスクアセスメントを実施するのかという疑問は当然わくと思います。
これについては、
- リスクアセスメント対象物(SDSによる伝達義務のある物質)を新たに採用したり、変更したりする場合(4M変更管理のMaterialですな)
- リスクアセスメント対象物を作ったり取り扱ったりする作業方法を新規に採用したり変更したりする場合(4M変更管理のMethodですな)
- リスクアセスメント対象物の危険性や有害性に変化が生じたり、生じるおそれがあるとき
SDSの危険性有害性に関わる情報の変更が知らされたとき
濃度基準値(今後の解説で出てきます)が設定されたり変更されたとき
ここまでは、必ずリスクアセスメントが必要ですが、以下の場合もリスクアセスメントを行うように努めることとされています。
- リスクアセスメント対象物に関わる労働災害が発生した場合で、過去のリスクアセスメントの内容に問題があるとき
- 前回のリスクアセスメントから一定期間が経過したとき
- 既に製造したり、取り扱っていた物質がリスクアセスメント対象物質として加わるなど、過去にリスクアセスメントを実施たことがない場合。
そのほかの項目
このほかに、リスクアセスメント等の対象の選定、情報の入手等も書かれているのですが、そこは上記の通達を読んでください。
そこまで体制や情報が整うといよいよリスクアセスメントを行うことになります。
化学物質のリスクアセスメントの手順
化学物質のリスクアセスメントの手順は、単純に書いてしまうと
- 危険性又は有害性の特定
- リスクの見積もり
- リスク低減措置の検討
となりますが、その後に必要な事として、
- リスク低減措置の実施(する必要がない場合もある)
- リスクアセスメント結果等の労働者への周知(こちらは必ず実施する必要がある)
があります。
そして、SDSを交付しなければならない対象物質は、必ず何らかの危険性・有害性を持つためリスクアセスメントが必須になります。
1.危険性又は有害性の特定
リスクアセスメントの最初のステップは、その物質や製剤に対する危険性又は有害性を特定することになります。
「SDSの情報などに基づくリスクアセスメント実施義務」とあるように、化学物質やその製剤の持つ危険性や有害性を特定については、SDSの情報を頼りにすることがほとんどだと思います。
その他には、一部は上で書いたリスクアセスメント対象物の管理濃度や濃度基準値、皮膚等障害化学物質もあるのですが、このシリーズではまだ説明されていません。
今後説明予定ですが、今はまだそういうものもあるとだけ認識しておいて下さい。
2. リスクの見積もり
危険性又は有害性の特定が終わったら、リスクの見積もりを行うことになります。
この見積もりの手法は、色々な方法があるのですが、職場のあんぜんサイトに化学物質のリスクアセスメント実施支援のページがあり、いくつものツールが載っています。
このらの詳細は、今後わかる範囲で解説予定です。
3. リスク低減措置の検討
リスクアセスメントを行った結果、十分にリスクが低いと判定されたものには特に何もする必要はないですが、リスクがあるもしくは高いとなった物質と工程では、これらのばく露を労働者に対して最小限度にするような対応措置を検討することになります。
例えば、保護具や保護メガネを付けたり、直接の皮膚接触を避けるために手袋をしたり、空気中の濃度が高くならないように、局所排気を取り入れたりすることを検討することになります。
そしてここまでが、通常リスクアセスメントと呼ばれる範囲になります。
リスクアセスメント実施以降の措置
リスクアセスメント実施の後、リスクがあると判断された場合は、上に述べたようにばく露を最小化する措置をとるのが普通です。そして上にも書きましたが、リスクアセスメントの結果を労働者に周知することが必要です。
次回は、リスクアセスメントツールと管理濃度や濃度基準値、皮膚等障害化学物質についてを記事にする予定
次回は、リスクアセスメントツールと管理濃度や濃度基準値、皮膚等障害化学物質についてを記事にする予定ですが、1回ではとても終わらないと思います。
なぜなら、
- 最近できた法規制の内容
- リスクアセスメントツールの紹介
だけで終わってしまうからです。詳細なツール解説はその後になるので、このシリーズはしばらく続くことになりそうです。
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