今回の記事は、遵法判断情報画面にはどんな情報が書かれているの(2)?chemSHERPA超入門(その7) にパンダ様より頂いた質問がもとになっております。
実際の質問と管理人の回答、そしてどうしてそのような回答になるのか説明していきたいと思います。
頂いた質問はどんなもの?そして管理人の回答は!
今回頂いた質問は、
成分情報で快削真鍮(C3604)を使用した場合、成分情報上は鉛が3.7wt%含有となり
遵法判断情報としてはID:00021
均質材料中の鉛び0.1重量%(1000ppm)【報告レベル:材料】において
含有率:37000ppm のため
含有判定はYで、用途コード:EU-RoHS-6(C)と言う回答で良いのですよね?データを提出した客先より
パンダ様の質問より引用
「適用除外を使用した閾値以下なので、含有判定はNだ」
と指摘された。
というものです。
実際には、それだと遵法判断情報上、値は全てクリアされちゃうけど良いのという懸念もありますとのことでした。
管理人の回答は、「パンダ様の理解で結構です。」という単純なものです。
chemSHERPAとしての答え方
この例は、chemSHERPAのchemSHERPA-AI_CI_データ作成事例サンプルを見ると答えはわかります。
現在は、サンプルの最新版がVer.2.07対応ですので、これをDLして、chemSHERPA-AI Ver.2.07で作成されたコネクタのデータを開いてください。
成分情報を開くと以下のようになっており、RoHSの適用除外の部分に、6(a)-Iが使用されているのがわかります。
ここから、遵法判断情報画面に移動し、Yのみ表示で必要な部分のみの情報を表示すると以下のようになります。
ちょっと見にくいですが、行番号17、物質群IDのSG014の鉛/鉛化合物の部分を見ると、含有判定はYになっており、用途コードの部分にEU-RoHS-6(a)-Iの表示があります。
考え方は単純で、遵法判断条件における、対象物質、報告用途、報告閾値の3点に置いて、鉛が対象物質であり、報告用途は電池を除く全製品なので当てはまり、報告閾値は均質材料中の0.1wt%を超えた0.2wt%含まれているのでこれも当てはまります。
従って、含有判定はYになるのです。その上で、用途適用除外であるEU-RoHS-6(a)-Iを使用していることを表示して、遵法しているということを表しているわけです。
客先の「適用除外を使用した閾値以下なので、含有判定はNだ」という言い方は、考え方の順番が逆だと言わざるを得ないわけです。
RoHS指令の考え方
RoHS指令の考え方についても説明しておきましょう。
RoHS指令は、電気電子機器の廃棄による環境汚染を予防するのが主な目的の規制です。従って、RoHS指令で規制している10物質は、規制値以上入っていてはいけないが基本です。
しかしながら、その物質を使用しなければ、必要な機能を果たせない、もしくは、代替材料を使用するとさらに環境負荷が大きくなってしまう場合のみ、用途適用除外が認められます。
これは、それを必要とする側が、技術的な背景や証拠を示して当局に許可を求めるプロセスになります。しかも、最大5年もしくは7年で見直しをしなければなりません(再度、認可を求めるプロセスを踏む)。
これは、技術的な進歩で用途適用除外が実施されている領域がそうしなくてもできるようになる可能性があるからです。
法令を作成した側は、用途適用除外は無くしたいというのが究極のターゲットになります。
上記のような法の考え方をわかっていれば、今回のような誤解は生まれないと管理人は考えます。
コメント
説明ありがとうございます
私もSHERPAを触りだした当初
Y/NはNなのでは?と考え、試しに入力したところ
適用除外の情報も消える→これはおかしい→資料をひっくり返して読み直す
chemSHERPA入門セミナーV.3テキスト_61ページに
https://chemsherpa.net/docs/description
適⽤除外の範囲で含有している場合でも、含有判定は「Y」(あくまでも「報告⽤途」と「報告閾値」で判定)
との記載があったのでYとする
って考えていたのですが
あまりに客先が自信満々に「Nである」と断言するので困惑しました
管理人さんのコメントを踏まえて自信をもって再度客先に「Yの間違えではないか?」と問い合わせたところ
「大手である弊社が間違えるわけはない」とのお答え
正直、客がそれで良いと言うなら、客先のコメントをエビデンスに残して
Nで回答しても良いかなぁ(どうせ客先でASSY化した際に消えるし・・・)とも思うのですが
特定の会社向けにのみ回答の方法を変えるってのも管理が面倒
と言うか、もし入力がごっちゃになってしまった場合、
正しく遵法情報を活用している他のお客さんに迷惑がかかるので
「うん、ならうちはYで出すけど、そっちで勝手にNに書き換えれば良いんじゃないかな?(意訳」
と返信し客先のリアクション待ちです
パンダ様、管理人です。
大手さんなんですか?それは困りましたね。
実際のデータサンプル事例の引用を送りつけてこれがchemSHERPA事務局の公式見解のはずだけど?と言ってみてはいかがでしょうか?
いや、会社として面倒なことはしたくない気持ちも重々わかりますので、パンダ様がもう面倒だからいいやというのも一つの解でそれはそれで仕方ないかもしれません。
ただ、chemSHERPAというスキームを正しく理解してもらうためには、そんな会社があると困るんですよね。
個別メール(お問い合わせ)でもよいので結果をお待ちしております。
その後の結末です
>「うん、ならうちはYで出すけど、そっちで勝手にNに書き換えれば良いんじゃないかな?(意訳」
と回答したのち、まぁ当然お客様より注意を受ける
しかし、その内容がちっともかみ合わない
らちが明かないので事細かく話の内容を確認
以下、その顛末ですが、かなり入り組んでいて分かりづらく申し訳ない
弊社:メーカA社と、商社B社に快削鋼ステンレスを使用したαと言う製品を納入
私:快削鋼ステンレスは材料規格として0.3wt%の鉛が含有しているため、SHERPAに6(a)-Ⅰの記載と遵法情報でYを選択し、A社とB社にSHERPAを提出
商社B:弊社の製品に快削鋼ステンレスを使用した部品を追加しα‘と言う製品として、α’を偶々A社に納入
商社B:弊社より入手したαのSHERPAに、弊社快削鋼ステンレス部品のデータを追加
商社B:快削鋼ステンレスのため6(a)-Ⅰを記載し、閾値が0.35wt%のため閾値以下の含有としてPb_0.35wt%含有と記載し、遵法情報でYを選択し【製品名と回答者情報を更新せず】A社にSHERPAを提出
A社技術担当:B社より提出されたα’のデータを見て、「閾値0.35wt%未満に対し、0.35wt%含有はおかしいのでは?てか、多分規格値0.35wt%じゃないのでは?」とA社窓口営業に連絡
A社窓口営業:突っ返されたデータは弊社のαと記載されている、なんか良く分からんけど技術者が鉛がどうこう言っている、多分遵法情報Yがいけないんだろうと【B社の出したα‘のデータについて弊社に問い合わせ】
弊社営業:A社よりデータについて何か言われているが良く分からないので、私にメールを転送、その際【A社から送り返されたα‘のデータは転送しなくても、過去提出したデータなのだからマスターが残っているから問題ないと独自に判断】
私:A社は何言ってんだ?と混乱
ってことでした
うちのデータも、客先技術の判断も、何一つ間違えていないけど
その間に入った人たちのおかげで、えらいことこんがらかってしまいました・・・
パンダ様、その後の結末の報告、ありがとうございます。管理人です。
伝言ゲームあるあるですね。しかも間に入った人たちは、自分が専門じゃないのであれば、何も変えずに報告してくれればいいものを、、、。
という話ですね。
ご苦労様です。でもこの手の話は、何も化学物質管理だけに限った話ではないですね。
追記
実際に起きたトラブルは鋼材の鉛0.35wt%だったのですが
「遵法情報が該当する場合のY/N判断ってどうなるの?」
と言うトピックスにおいて
6(c)の銅合金に対する鉛の適用除外の方が、親しみ深く分かりやすいと思い
質問時に鋼材6(a)-Ⅰではなく、6(c)として相談させていただきました
パンダさま
お痛みお察し申し上げます。大企業=全てが正しいと考えている輩は結構いるように感じますが、これは僕の周辺の事だけかもしれません。
(過去に。鉱物調査で某『S』社の環境管理部からクレームを受けたのですが、「ルール通りに処理した結果なので、その部分を読んでから申し出て下さい。」と返信すると、その後何の連絡も無かったということがあります。)
>えらいことこんがらかってしまいました・・・
アフリカの原住民の皆様にホヤ酢を提供したって感じですかね?(笑)
ステップ様、コメントありがとうございます。管理人です。
「大企業=全てが正しいと考えている輩」、まあ、いるでしょうね(^^;。
また大企業の場合は、人も多いので、担当者全員が全く同じレベルになるということもありません。