Q&Aの4回目は、
顧客から化学物質についての調査要求が来た時、内容の意味がよく分からないので「これはどういう意味でしょうか?」と質問しても「何でもいいから回答してよ!」と言われたらどうするか?
です(^^;。
現場じゃまだ起きてるんだろうなあ。
「何でもいいから回答してよ!」は、依頼者(顧客)の怠慢
まず、基本的な考え方として、現在の化学物質管理(特に製品含有化学物質)に関する調査依頼は、法的な規制があるもの以外は、依頼者(顧客)と自社の契約上に成り立っているものです。
依頼者は、自分に必要な化学物質の情報(例えば自社製品は欧州に輸出するのでREACHのSVHCの情報が必要だとか)を得る必要があるために、自社(調査を受ける側)に調査依頼を出すわけです。
更には依頼者の会社で自主管理している物質もあるかもしれません。
ですので、依頼者側は何を根拠に調査をしているのか、それが突発的な事であっても、明らかなはずです。
従って、調査を受ける側から「これはどういう意味でしょうか?」と質問された際「何でもいいから回答してよ!」は、本来依頼側としてあってはならない答えです。
少なくとも、何を根拠にどのような方法で回答してほしいかを最初に伝えるのは、調査依頼を出す方です。
サプライチェーンが物事を複雑にする
ところが、「何でもいいから回答してよ!」は起こりえます。
例えば、下の図のような場合を考えましょう。A社はきちんと化学物質の調査に関して調査理由、調査の閾値、条件(意図的添加が無い場合はその旨を書くことなど)などをB社に対して提示したとします。
ところが、B社は自分の所ではわからないので更なる上流に聞くことはよくあります。この際、調査理由の伝達が抜け落ちたとします。調査を受けたC社は、更に上流であるD社に聞くことになるのですが、その際に、閾値や条件が抜け落ちることがないとは言えません。D社の調査担当者は、物質について調査するものと思うわけですね。
D社の担当者が、意図がわからず質問しても、「何でもいいから回答してよ!」が返ってくることは大いにありえます。
管理人もこれには過去相当悩まされたというか悩んだ記憶があります。
じゃあ、どうすればいいのか?
じゃあ、どうすればいいのでしょうか?
管理人的には、「人間が介在してる限りは0にはならないよなあ」と思ってしまうわけですが、そうも言っていられません。
まず第一に、B社においてもC社においても、製品化学物質管理に対する管理体制(また大げさな)が、完全ではないということになります。
B社、C社とも受け取った調査内容が完全な状態に上流に伝わっていないのですから、社内管理においては欠陥があると言わざるを得ません。社内の情報共有体制はどうなってんの?どういう手順で上流に調査をかけることになってるの?と監査だったら指摘されてしまうでしょう。
実際のところ、社内において手順が完全に金太郎あめの如くなっているかと言えば、そうでない場合が多々あるのは皆さんも経験済みだと思います(えっ?、うちは大丈夫?、そういう会社は化学物質管理においても大丈夫でしょう)。
ですので、この部分はきちんと再教育する必要があります。
もう一つとして、「何でもいいから回答してよ!」ではないのですが、例えば、A社の調査依頼の中身をB社が異なる解釈をしてしまう場合はありえます。この場合は、B社としては気が付きようがありません。A社の担当者は、思ったものと違う調査結果が来て慌てることになるかもしれません。
A社として限りなく平易に調査できるように配慮すべきだと思うのですが、化学物質管理の調査ってそうでなくても複雑です。ですので、解釈違いによる齟齬は全く0にはなかなかならないだろうと思えます。
「何でもいいから回答してよ!」は、社内の仕組みである手順や教育がしっかりしていないと何時でも起こりえます。
そのことには、大企業も中小企業も何ら差はありません。
ただ、特に中小企業の場合は人員不足により、化学の知識がそれなりに高い人を担当にできるとは限らないということはあるでしょう。
調査側が上に述べたようなことが調査される側にはあり得るということを意識するだけで、かなり事態は良くなると思えます。
更に「何でもいいから回答してよ!」に対して答える側がやるやり方としては、
- 「すみません、当方知識がなくどのように回答してよいかわかりません。具体的にどのような回答をすればよいか例を見せていただけますか?」と回答書式と顧客が欲しい回答を聞き出す手法はあるかもしれません。
→お前の言ってることじゃ訳が分からなくて話になんないんだよ! - 「すみません、当方に調査内容が分かるようにもう少し詳しく説明していただける担当者もしくは上司の方とお話しできないでしょうか?」とわかる人や上司との交渉に持っていく方法があるかもしれません。
→もっとちゃんと話の分かる担当者もしくは上司を出せって言ってるんだよ! - 「当方の標準書式でお答えいたします!」何でもいいなら、これで出してしまうということもあるかもしれません。まあ、きちんとした標準書式を持っていないといけませんが。
→何でもいいって言ったんだから、これ以上文句付けてくんな!
矢印の後は、調査を受けた側の心の声を悪魔的に代弁してみました(^^;。
ということで、当ブログの管理人は「何でもいいから回答してよ!」みたいな不都合、理不尽が少しでもなくなればいいなと思っているわけです。
ですので、いつも書いていますが、当ブログはリンクフリーですので、皆さんの仕事を少しでも楽にするために、サプライチェーン上の方々にご紹介ください。自分だけで見たって、皆さんの仕事は楽になりません。
コメント
弊社ですと、
①内容が判らない場合は「知見がないため回答致しかねます」
②法令に基づく物質以外の含有問合は「製法における秘密保持の観点から回答致しかねます」
③「離型剤」等の範囲の広いケースは、具体的物質名を提示するまで回答しない
(滑剤・界面活性剤等離型剤として使用していないものでも該当するため)
等の対応を取っています。
パンチ様、コメントありがとうございます。管理人です。
具体的にどうされているかという例は、とても貴重ですね。参考になります。
①の回答だと、訳が分からず出した顧客の場合、なんか文句を言ってきそうですね(^^;。
②は、契約書にどう書いてあるかに依存しそうな気がします。
③これはまあそうでしょうね。答えようがないと思います。
今回は、少し依頼側の立場でコメントしてみました。
①の場合、基本は顧客に資料・背景の提示を依頼した上での回答となります。
中には外文の法令等もありますので、内容が判らない場合は知見無の回答です。
②の場合、弊社ではBtoBの契約グレードが少ないので一般的にこの対応を取っています。
添加剤の技術的なウェイトが高いため、客先とはNDAを基本結ばない方向です。
容器包装の分野ですので、一般的な工業製品とは対応は異なるものと思っています。
パンチ様、ご返答ありがとうございます。管理人です。
取り扱っている製品の特性ということですね。
実際には、何を作ているかによっても回答方法が変わる場合もあるのは理解できます。
①の場合は、資料提出を求めているということですので、顧客に質問はしているわけですね。
丁寧な説明ありがとうございます(^^)。
管理人も理解が深まりますし、記事を読まれている方も参考になると思います。
>特に中小企業の場合は人員不足により、化学の知識がそれなりに高い人を担当にできるとは限らない
イタタタ~(笑)。でも、外れてはいないと思います。
それと、これは致し方ない気もしますが、商社の営業さんも、ボトルネックになることが多いように感じます。
ともあれ。
とにかく、よく聞き、納得して、データの作成ルールに基づいたデータを作成して、ご提出しています(汗)。
ステップ様、コメントありがとうございます。管理人です。
中小企業の方は、本当に大変だと思うんですよ。何せ、そんなに工数をかけれるわけではないですから。
商社の営業の方がボトルネックになるのもセミナーをやっているとよく聞く話ですね。
>とにかく、よく聞き、納得して、データの作成ルールに基づいたデータを作成して、ご提出しています(汗)。
ご苦労様です。
弊社は上流側ですが、確かにこういうケースはありますね!
依頼してくる会社さんも規制について知識がない場合が多く、右から左へ依頼のメールを転送してくるだけ、というのがほとんどです。
詳細を聞いても埒が明かないのは分かっているので、対象となっている弊社製品の明細を聞き、依頼の内容を「解読」しながら自分で調べて、その都度必要な書類や様式を用意して回答しています(おかげで勉強にはなっていますが……)。
サプライチェーン上の方々を「教育」しようにも、相手の会社さんも化学物質管理の担当がいるわけでもなく、他の業務の片手間にやっているような状況です。私もそこまで時間や労力が割けないので実際には難しい……
ひがしの様、コメントありがとうございます。本名で書かれておりましたので、名字だけにしてひらがなにしてあります。
実際には、難しいという本音はよくわかります。時間も取られますしね。
丸投げなら、本当に丸投げですって、きちんと言ってくれるならまだましだと思うんですよね。というか、そう言うべきだと思います。
その場合は、依頼に関わる情報を全て欠落させないで伝えて欲しいと思います。
これは逆のパターンかもしれませんが、仕入先が「調査対応不可」と言ってくるケースでは、私の方から「何でもいいから提出可能な資料をください!」とお願いすることがあります。
提出してもらった資料から、その取引先の対応レベルがなんとなく分かるので、その後どのように依頼するかを検討します。
何を依頼しても全く返事が無い取引先もあり、電話または直接訪問して催促ということもしばしばですが。。。