今回は、マイクロプラスチックについて(その3)です。
今までの一般論と異なり、昨年8月にECHAから発表された欧州REACHの制限の草案を見ていくことにします。
制限の草案はどこに行けば見ることができるのか
ECHAのHot TopicsにあるマイクロプラスチックのページにDecision by the European Commission and EU Member Statesという項目があるのでそれを開きましょう。
そこに2022年8月に規制草案が出たよと書いてありリンクが貼ってあります。そこを押すと欧州委員会のページの中の書類のページが出てきます。
このページの一番下からDLできるようになっています。
草案の制限条件はどうなっているのか
上で紹介したページからDLできる書類は、二つあるのですが、制限条件が書かれているのはANNEXの方です。
では、中身を見てみましょう。
最初に順番ふってねと書かれた後、
物質としては、合成ポリマー微粒子となっています。
これだけだと分からないので、その下に説明書きが書かれています。
合成ポリマー微粒子
固体であり、粒子に含まれ、それらの粒子の少なくとも 1 重量%を構成するか、粒子上に連続的な表面コーティングを構築するポリマーで、これらの粒子の少なくとも 1 重量%が次の条件のいずれかを満たすもの:
(a) 粒子のすべての寸法が5mmに等しいか、またはそれ以下である。
(b) 粒子の長さが15mm以下であり、長さと直径の比が3以上である。
以下のポリマーは、この指定から除外される。
(a) 自然界で行われた重合プロセスの結果であるポリマーで、化学的に修飾された物質ではないもの。
(b) 付録[X]に従って証明されるように分解可能なポリマー。
(c) 付録[Y]に従って証明されるように、2g/Lを超える溶解度を有するポリマー。
(d) 化学構造中に炭素原子を含まないポリマー。
マイクロプラスチックの定義ということになりますね。
では、制限条件の草案はどういったものでしょうか?こちらの方は、やたら長いので翻訳ソフトの内容ほぼそのままです(検証していません)。
- 物質単体として、または合成ポリマー微粒子が求められる特性を付与するために存在する場合、0.01重量%以上の濃度で混合して市場に出してはならないものとする。
- 本項目において、以下の定義が適用される。
(a)「粒子」とは、物理的境界が明確な、単一分子以外の微小な物質片をいう。
(b) 「固体」とは、液体または気体以外の物質または混合物をいう。
(c) 「気体」とは、50℃において300kPa(絶対圧)を超える蒸気圧を有する物質又は混合物をいい、又は20℃において101,3kPaの標準圧力で完全に気体である。
(d) 「液体」とは、以下の条件のいずれかを満たす物質または混合物をいう。
(i) 50℃の物質または混合物は、300kPa以下の蒸気圧を有し、20℃及び101,3kPaの標準圧力で完全に気体ではなく、101,3kPaの標準圧力で20℃以下の融点または初融点を有する。
(ii) 物質または混合物が、米国試験材料協会(ASTM)D 4359-90 Standard Test Method for Determining Whether a Material Is a Liquid or a Solidの基準を満たすこと。
(iii) 物質又は混合物が、1957 年 9 月 30 日にジュネーブで締結された「道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定 (ADR)」の付属書 A の第 2 部 2.3.4 章に記載の流動性試験(ペネトロメーター試験)に合格すること。 - 本項目で対象とする合成ポリマー微粒子の濃度が、既存の分析方法または付属文書によって決定できない場合、第1項の濃度制限への準拠を検証するために、少なくとも以下のサイズの粒子のみを考慮するものとします。
(a) すべての寸法が5mm以下の粒子については、どの寸法でも0.1μm。
(b) 長さが 15mm 以下で、長さと直径の比が 3 を超える粒子については、どの寸法も 0.3μm とする。 - 第 1 項は、以下のものを上市する場合には適用されない。
(a) 産業現場で使用するための合成ポリマー微粒子。
(b) 指令2001/83/ECの範囲内の医薬品及び欧州議会及び理事会の規則(EU)2019/6の範囲内の動物用医薬品。
(c) 欧州議会および理事会の規則(EU)No 2019/1009の範囲内のEU肥料製品。
(d) 欧州議会および理事会の規則(EC) No 1333/2008の範囲内の食品添加物。
(e) 体外診断装置(規則(EU)2017/746の範囲内の装置を含む)。 - 第 1 項は、以下の合成ポリマー微粒子の上市には適用されない。
(a) 意図された最終用途において使用説明書に従って使用された場合に、環境への放出が防止されるように技術的手段により収容される合成ポリマー微粒子。
(b) 合成ポリマー微粒子であって、意図された最終使用時に、その物理的性質が永久的に変更され、ポリマーがもはやこの項目の範囲に含まれないもの。
(c) 合成ポリマー微粒子であって、意図された最終使用中に固体マトリックスに恒久的に組み込まれるもの。 - 第 1 項は、以下の用途について以下のように適用される。
(a) …[OPは日付を挿入してください:この改正規則の施行後6年]から、香料のカプセル化に使用するための合成ポリマー微粒子。
(b) …[OPは日付を挿入してください:本改正規則発効後4年]から、規則(EC)No 1223/2009の付属書IIからVIの前文の(1)(a)に定義される「リンスオフ製品」(当該製品が本項(a)に該当するか、研磨剤として、すなわち角質除去、研磨または洗浄に用いられる合成ポリマー微細粒子(「マイクロビーズ」)が含まれていない場合。
(c) 規則(EC)No 1223/2009の附属書IIからVIまでの前文の(1)(e)に定義される唇用製品、同規則の附属書IIからVIまでの前文の(1)(g)に定義される爪用製品および同規則の範囲内のメークアップについて、本項の(a)(b)点に該当するかマイクロビーズが含まれていない限り、(OP:日付挿入:この改正規則発効後12年)から。
(d) 規則(EC)No 1223/2009 の付属書 II から VI の前文の (1)(b) に定義されるリーブオン製品については、本項 (a) または (c) に該当する場合を除き、…[OP は日付を挿入してください:この改正規則の発効後 6 年]からとする。
(e)… [OP 日付を挿入してください:本改正規則の発効日から5年後] から、規則 (EC) No 648/2004 の第2条(1)に定義される洗剤、ワックス、ポリッシュおよびエアケア製品について、これらの製品が本項(a)に該当するかマイクロビーズを含む場合を除いて。
(f) 規則(EU)2017/745の範囲内にある「機器」については、それらの機器がマイクロビーズを含まない限り、…[OPはこの改正規則の発効日から6年後の日付を挿入してください]からです。
(g) 規則(EU)2019/1009の第2条(1)に定義される「肥料製品」で、同規則の範囲に含まれないものについて、…[OPは、この改正規則の施行日から5年後の日付を挿入してください]。
(h) 規則(EC)No 1107/2009の第2条(1)の意味における植物保護製品、及び欧州議会及び理事会の規則(EU)528/2012の第3条(1)、ポイント(a)に定義される殺生物製品*から・・・[OPは、この改正規則の発効日から8年を挿入]する。
(i) (g)または(h)に該当しない農業・園芸用途の製品については、…[OPは、この改正規則の発効日から5年後の日付を挿入してください]から。
(j) 人工スポーツ面に使用する粒状インフィルについては、…[OPは本改正規則発効日から6年後の日付を挿入してください]から。 - 第4項の(d)および(e)の合成ポリマー微粒子を含む製品の供給者、および第5項の合成ポリマー微粒子の供給者は、環境への合成ポリマー微粒子の放出を避けるために、使用および廃棄に関する指示を提供するものとする…[OPは、この改正規則の発効日から24ヶ月後の日付を挿入してください]。
第4項(a)の合成高分子微粒子の供給者は、以下の情報を提供するものとする…[OPは、この改正規則の発効日から24ヶ月後の日付を挿入してください]。
(a) 合成ポリマー微粒子の環境への放出を回避するための使用及び廃棄に関する指示。
(b) 以下の記述:「供給される合成ポリマー微粒子は、欧州議会及び理事会の規則(EC)1907/2006の付属書XVIIの項目[OPは付属書のポイント(1)の項目の番号を挿入してください]によって定められた条件に従う」。
(c) 物質または混合物中の合成ポリマー微粒子の量または場合により濃度に関する情報。
(d) 物質または混合物に含まれるポリマーに関する情報であって、川下ユーザーおよびその他の供給者が第8項に規定する義務を遵守することを可能にするもの。
6項の(c)の合成ポリマー微粒子を含む製品の供給者は、…[OP:この改正規則の施行日から8年後の日付を記入してください]から…[OP:この改正規則の施行日から12年-1日後の日付を記入してください]まで、「この製品はマイクロプラスチックを含む」という以下の記述を提供しなければならない。
本項の第1号、第2号及び第3号にいう情報は、明確に見える、読みやすい、消えないテキストの形で、又は第1号及び第2号の情報に関して適切な場合には、ピクトグラムの形で提供しなければならない。テキストまたは適切な場合にはピクトグラムは、合成ポリマー微粒子を含む製品のラベル、包装、安全データシート、またはパッケージリーフレットに記載されなければならない。テキストまたは適切な場合にはピクトグラムに加えて、サプライヤーは、その情報の電子版にアクセスできるデジタルツールを提供することができる。
本項に従って使用及び廃棄に関する指示が文章の形で提供される場合、当該加盟国が別段の定めをしない限り、物質又は混合物が上市される加盟国の公用語で記載されるものとする。 - [OPは、本改正規則の発効日から 24 ヶ月後の日付が属する暦年を挿入してください]から開始する。ただし、この計算日が5月31日より後の年である場合は、次の暦年を挿入してください。] 工業用地においてプラスチック製造の原料として使用されるペレット、フレーク、粉末の形態の合成ポリマー微粒子の製造業者および工業用下流ユーザー、および… [OP この改正規則の施行日の36ヶ月後の日付が到来する暦年を挿入してください。ただし、この計算日が5月31日より後の年である場合は、次の暦年を挿入してください]、工業用地で合成ポリマー微粒子を使用する他の工業用下流ユーザーは、毎年5月31日までに以下の情報を庁に提出するものとする。
(a) 前暦年の合成高分子微粒子の用途の説明。
(b) 合成ポリマー微粒子の各使用について、使用されたポリマーの識別に関する一般的な情報。(c) 合成ポリマー微粒子の各用途について、前暦年に環境に放出された合成ポリマー微粒子の量の推定値。
から…[OPは、この改正規則の発効日から36ヶ月後の日付が該当する暦年を挿入してください。ただし、この計算日が5月31日よりも年内に遅い場合は、次の暦年を挿入してください]、初めて市場に出される第4項、ポイント(b)、(d)および(e)の合成ポリマー微粒子を含む製品の供給者、および初めて市場に出される第5項の合成ポリマー微粒子の供給者は、毎年5月31日までに以下の情報を庁に提出する。
(a) 前暦年に合成ポリマー微粒子が上市された最終用途の説明。
(b) 合成ポリマー微粒子が上市された各最終用途について、前暦年に上市されたポリマーの識別に関する一般的な情報。
(c) 合成ポリマー微粒子が上市された各最終用途について、前暦年に環境に放出された合成ポリマー微粒子の量の推定値。
*動物用医薬品に関する2018年12月11日の欧州議会および理事会の規則(EU)2019/6および指令2001/82/ECの廃止(OJ L 4, 7.1.2019, p. 43).
** 2019年6月5日の欧州議会および理事会の規則(EU)2019/1009は、EUの肥料製品の市場での入手可能性に関する規則を定め、規則(EC)No 1069/2009および(EC)No 1107/2009を修正し、規則(EC)No 2003/2003(OJ L 170, 25.6.2019, p.1) を廃止する。
*** 食品添加物に関する2008年12月16日の欧州議会および理事会の規則(EC)No1333/2008(OJ L 354, 31.12.2008, p. 16)。
**** 植物保護製品の上市および理事会指令 79/117/EEC および 91/414/EEC の廃止に関する 2009 年 10 月 21 日の欧州議会および理事会規則 (EC) No 1107/2009 (OJ L 309, 24.11.2009, p. 1).
* 2012年5月22日の欧州議会および理事会の規則(EU)No 528/2012は、殺生物製品の市販および使用に関するものである(OJ L 167, 27.6.2012, p. 1)」。
うーん、長いよ。
1.が大前提なのですが、4.や5.に適用の除外項目、6.には期限までの除外項目、7.に使用、廃棄者への情報伝達、8.にECHAへの届出の義務、それに用語の定義などまで書かれています。
まだ草案なので何とも言えませんが、これほど書かれたものが今後制限の内容になると読む方は大変だと思います。
思わず、一つの独立した規制が書かれているのかと思いました。
マイクロプラスチックのページの一番下には予定のタイムスケジュールが載っています。
2023年までは、加盟国による議論と投票と書かれており、早くて最終草案が出てくるのは来年だろうと考えられます。
そこから規制化への手続きが始まります。
マイクロプラスチックのこのシリーズは、ここで一旦終了します。何かまた大きな動きがあれば別ですが。
コメント
いつも参考にさせて頂いております。
マイクロプラスチック規制に関するタイムスケジュールが書かれていたのは
気づかなかったので大変助かりました。まだ慌てなくて済む…
取り上げて頂いて有難うございました。
気づき点が有りましたので追加でコメント致します。
マイクロプラスチックに関して全般的に規制されると聞いていましたが、
6項の用途に対して限定して適用という解釈で宜しいのでしょうか?
そうなると影響が限定的になるので非常に助かります。
御存じでしたら回答のほど宜しくお願い致します。
パンチ様、コメント質問ありがとうございます。管理人です。
考え方としては逆だと思います。記事の下の方にも書いたのですが、
1項が大前提としてあり、それから除外されるものとして4項、5項があり、適用期限が遅れるというか経過期間があるものが6項に書かれていると解釈できます。
0.01%濃度以上のマイクロプラスチック添加禁止が大前提ということですね。
弊社では樹脂中に添加する有機フィラー(マイクロプラスチック)が対象となっているのですが、5項の除外規定に該当するように考えています。
この解釈で不備がありますでしょうか。ご教示頂けると幸いです。
パンチ様、コメント、質問ありがとうございます。管理人です。
まだ草案段階ですのでわかりませんが、5項の除外規定に該当するかどうかを御社で説明できるようにしておくべきだと思います。
Q&Aとかも出る可能性もありますし、今は考え方を固めておくというのでいいのではないかと思います。