さて、製品化学物質管理における経験や事例シリーズの第10回目です。
このシリーズは、2002年1月(もしくは、2001年11月or12月)から製品化学物質管理に関わってきた管理人が経験したことや事例を書いていくものです。
今回も、製品含有化学物質の事故TYPE 1の例です。
このシリーズで書いていく事故例は、多少の脚色はしていますが、管理人が過去に経験したものになっています。
事故例の第3回目は、工程管理の問題です。実際に、製品化学物質管理における事故と言われるものは工程管理の問題に起因するものは多く、自分の会社の中でも当然起こるのですが、調達先における工程管理の不具合で入っていてはいけない化学物質が見つかる場合も多く起こります。
今回は、どの様な例が過去にあったのか、見てみましょう。今後、これらの不適切な化学物質の混入の例は、数回解説したいと思います。
工程管理は製造の基本
工程管理は、製造の基本であることは言うまでもありませんし、皆さんがご存じのことです。ですが、化学物質に特化した工程管理は、従来のものと少し異なることがあります。
起こった事象
あるロットの樹脂成型品から、鉛がRoHS指令の閾値以上検出された。
しかも、このロットの樹脂成型品では、鉛は検出されたものもあったが、検出されないものもあった。
原因と考えられた事柄
この原因は、樹脂成型品を作る射出成型機において鉛入りの樹脂と鉛無しの樹脂の両方の樹脂の使用していたことにありました。
メーカーさんは、両方の樹脂が使われていることを承知していましたから、鉛入りの樹脂をした後は、射出成型機内部に残っている樹脂を吐き出させるために捨てショットを行っていました。
しかしながら、寸法精度などは十分にとれるようになっても、射出成型機内部にごくわずかへばりついていた鉛入りの樹脂の残滓が混入してしまったのです。
更に話がややこしいのは、樹脂の色が両方とも黒だったことです。色的な区別はほぼできませんでした。
対応策
この場合の一番単純な対応策は、鉛入りの樹脂用の成型機、鉛無しの樹脂用の成型機と専用機化してしまうことです。
ただし、成型機の稼働率を考えると一概にそれでいいのか?ということになります。いちいち成型機を洗浄する手間と稼働率、生産の順番などの生産管理など複数の要素が関わってくることになります。
今は色を出すための鉛入りの樹脂がどの程度生産されているのか管理人は、全くわかりません。以前よりは圧倒的に少なくはなっているだろうと予想はしています。
今回の事象で分かることは何か?
今回の事故例からわかることも色々あると思います。
- 化学物質管理の1000ppmという閾値は、物理的な問題よりセンシティブな場合がある。
- 化学物質は外見や寸法精度で判断できない
- 汚染防止のためには専用機化、もしくは専用ライン化する必要もあるかもしれない(コストがかかる)
混流生産の場合は、色々な意味で注意が必要です。鉛はもう駆逐されているかもしれませんが、フタル酸エステルなど他の物質についてはまだ汚染の可能性は0にはなっていないでしょう。
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