どうも管理人です。製品含有化学物質担当になっちゃった人のための超初級化学講座の17回目です。今回は、前回予告したように分析手法そのもののお話です。
でもなあ、製品化学物質管理は、分析手法の知識は無くてもできますからね。
分析手法の知識は、まあそういったことも知っていると少し理解が深まる場合もある、もしくは自分もいろんなこと覚えたんだなあと感慨にふけるということかもしれません。
分析手法の分類
前回、蛍光X線分光法(XRF)から始まって、 熱分解装置/加熱脱着装置を使用するガスクロマトグラフィー質量分析法(Py-TD-GC-MS )まで11個の分析手法を書きました。
それで、もちろん細かいことを言ってしまうと全部原理から装置まで違うわけですが、そこはそれ超初級化学講座ですから、面倒なので3種類くらいに分けてしまいたいと思います。
良いのかそれで?、管理人、分析専門の人に思いっきり怒られないか ((((;´・ω・`)))。
また、今回すごく大雑把に解説しているので、正確性は乏しいかもしれません。Googleなどで分析手法を検索していただくと詳しい原理や解説が載っています。
ですので、詳しく知りたい方は検索するのが良いと思います(管理人のずぼらさが出てるな)。
光を使う分析方法
最も、分析によく使われる手法として光(可視光とは限らないので注意)を元素の同定や定量に使う分析方法があります。前回紹介した分析手法の中では、
- 蛍光X線分光法(XRF)
- CV-AAS
- CV-AFS
- AAS
- AFS
- ICP-OES
- 比色法
がこれに当たります。
比色法は、その名の通り色(主にその濃さ)を比較する分析手法で、濃度が薄かったら薄いピンク、濃度が濃かったら濃いピンクになるみたいな試薬を使って色を比較する方法です。もちろん、見た目の比較だといろいろあるので、電気信号に変換して測る吸光光度計という装置を用います。
AAS (Atomic Absorption Spectrometry)は原子吸光法と呼ばれ、バーナーのフレームに試料を送り込んだりや試料を入れたグラファイトチューブに電流を流すなどして、気化させ原子状態にしたものに、その元素の励起波長に対応する光を当ててその吸収を測ることで分析するものです。
AFS (Atomic Fluorescence Spectrometry)は、原子蛍光分光法と呼ばれ、AASとは異なり、励起した原子からの蛍光を検出してその強度から分析を行うものです。
CV (Cold Vapor) という前置きがついたAASとAFSがあります。
これは日本では還元気化法と呼ばれていると思いますが、前回で測定対象になっている元素では、水銀に使われている場合がほとんどです。CVは原子状の水銀蒸気を発生させるための前段階処理の一種です。
ICP-OES (Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectrometry)は、誘導結合プラズマ発光分光分析法と呼ばれ、6000 ~ 10000K のアルゴンプラズマの中に溶液化した試料を送り込み、イオン化、励起させることによりその元素固有の発光から、波長で元素を特定し、強度で定量を行う分析法です。
今まで紹介してきた方法は、試料を溶液化するという前処理が必要ですが、
蛍光X線分光法(XRF) (X‐ray Fluorescence Spectrometry )は、試料の前処理をあまり必要としません。更に、X線の当たった範囲だけの部分の分析が可能です。
原理的には、X線によって原子核の内殻の電子を弾き飛ばされ、そこに空いた空孔により外側の殻にある電子が遷移するときに発生するX線(蛍光X線)を測定することによって元素の種類と量を測る方法です。
だったら、XRFで良いじゃないかと思う人がいるかもしれません。
ところが、そんなに話は単純ではありません。XRFの定量下限はあまり低くない(微量だと測れない)ですし、精度も上に書いた残りの分析手段に比べて劣ります。
従ってIEC62321でも、XRFはスクリーニングするための分析手法になっています。
分子や原子の重さ(質量)を使う分析方法
原子や分子は、それぞれ固有の重さを持っています。このことを利用している分析手法が質量分析法です。
前回紹介した分析手法の中では、
- ICP-MS
- ガスクロマトグラフィ-質量分析(GC-MS)
- 熱分解装置/加熱脱着装置を使用するガスクロマトグラフィー質量分析法(Py-TD-GC-MS)
がこれに当たります。
ICP-MS (Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)は、ICP-OESと前半部分が同じ名前ですが、ICPは先に述べたように日本語では誘導結合プラズマと呼ばれ、アルゴンプラズマの中で元素をイオン化させる方法です。それを質量分析計の中に導き、質量を測定することによってどの元素が入っているか、その信号強度によってどのくらい入っているかを測定します。
質量分析計も四重極型、二重収束型、時間飛行型(TOF)などの方法があるのですが、要は重さの違いで分離をできる原理に基づいています。
ICP-MSでは、 四重極型、二重収束型が使われます。
ガスクロマトグラフィ-質量分析(GC-MS) は、この後に説明するクロマトグラフィーによる物質分離手法と質量分析計が組み合わせられている装置です。
主に有機物の分析に使用されます。分子をイオン化してその質量と分解パターンから分子構造を同定することができます。
熱分解装置/加熱脱着装置を使用するガスクロマトグラフィー質量分析法(Py-TD-GC-MS)は、GC-MSの前に熱分解装置/加熱脱着装置を付けたもので、IEC-62321ではポリマー中のフタル酸エステルの測定方法に書かれています。
クロマトグラフィーを使う分析方法
このクロマトグラフィーという手法は、単に分析手法と言っていいのかどうか管理人よくわかりません。ですが、これを用いないと分析できない場合はしばしば存在します。
クロマトグラフィーは分析手法というより、混合物を分離する手法です。もっとも単純で有名なのは、ペーパークロマトグラフィーだと思います。小中学校で実験した方もいるかもしれません。サインペンの色を分けたり、花や葉っぱの色成分を分けたりする実験です。
クロマトグラフィーは、固定相(ペーパークロマトグラフィーでいえば紙)と移動相( ペーパークロマトグラフィーでいえば水その他の溶剤)による混合物成分の分配係数の違いによって分離をする手法です。
固定相は固体もしくは液体が使われ、移動相としては、気体、液体、超臨界流体が使われます。
固定相と移動相が存在すれば、両者に対する分配係数の違いで分離ができるためいろいろな方法が存在します。
上で説明したGC-MSは、移動相としてガスを使うものです。
クロマトグラフィーを使用した分析手法として残っているのは
- 燃焼イオンクロマトグラフィ(C-IC)
ですね。
燃焼イオンクロマトグラフィ(C-IC)は、試料を酸素で燃焼させて分解し、分解物を水性の吸収液に捕集します(燃焼部分)。
それをイオンクロマトグラフィーで分離するのですが、これは固定相にイオン交換樹脂、移動相は水性の液体が用いられているクロマトグラフィーです。
出てくる時間でイオンが同定でき、その信号の強さで量がわかります。
これは、何に使われるかというとハロゲンの定性・定量に使われます。燃焼したものを吸収液に吸わせると完全に分解しているため、ハロゲンは各陰イオンとして吸収液の中に存在することになるのです。
分析手法は、化学物質管理においてはおまけの知識
以上、本当にざっと(ざっとですらないな)分析手法について解説しましたが、各分析手法は、それだけで本が1冊書けるレベルです。
詳しく知りたい方はネット検索して、それでももっと知りたい方は本を買ってください。
実際、化学物質管理の仕事をしていて本当に分析が必要になるのはわずかな場合です。
もちろんチェックのために抜き取りで分析するというのも装置を持っている場合は構わないとは思いますが、通常は、蛍光X線分光法(XRF)によるスクリーニング分析で十分のはずです。
ですので、分析手法の知識は、化学物質管理においては単なるおまけの知識だと管理人は思っています。管理人がやっているセミナーには一切出てきません。
お知らせ
管理人、化学物質管理ミーティングをはじめ仕事が立て込んでおり、ブログの更新頻度が1-2週間ほどかなり低下する予定です。昔のようにゴリゴリ仕事をする根性はもうないし、自分のペースでやりたいのでよろしくお願いします。m(__)m。
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