今回から、いくつか管理人が見聞きしたというか質問を受けた内容も含め、特定される部分は除いて書いていこうと思います。
対応方法は、様々だと思うので具体的には書けませんが、多少でもヒントになればよいかなと思います。
SVHCってどうやって調べるんですか?
管理人が、セミナー講師をしていることは知ってる人も多いと思うのですが、セミナーの時に頻繁に聞かれる質問が、
SVHCってどうやって調べるんですか?
というものです。
この場合の質問者の言っている意味は、大部分の場合、REACH規則の第33条の要求による成形品中に0.1wt%以上のSVHCが含まれる場合、供給者が受領者(顧客)にそれを安全に使用するための情報(少なくとも物質名)を提供しなければならない、からきているはずです。
でも、実際は、
顧客に調べろって言われたんですけど実際にどうするんですか?半年ごとにSVHCは新たに足されるのに答えが返ってこないんです(泣)。
というものだと思います。もしくは、最近SVHC入ってたら報告してねと言われたんですけど、今だと「219物質もどうやって調べるんですか?」という方もいらっしゃるかもしれません。
REACHは欧州の規制
REACH規制は、欧州の規制です。
ですので、規制を守らなければいけない人は、欧州域内の製造者、輸入者、代理人などになります。
従って、域外の人は通常この規制で罰せられることはありません。ですが、欧州化学品庁(ECHA)は、REACH規則に対するガイダンスをいくつも発行しています。それらは、Guidance on REACHというページにまとめられています。
このページ中に、Guidance on requirements for substances in articlesという項目がありますので、そこを開くと実際のガイダンスをpdfで落とすことができます。この中に、色々なことが書いてあるわけですが、読んでも実際できるかよ!と言いたくなってしまうかもしれません。
特に、サプライチェーン上の情報の入手に関する言及もありますが、一般論に終始しています。
なんでSVHCを聞かれるの?
欧州の輸入者は、欧州域内で製品を顧客に売る場合(一般消費者は除く)には、当然SVHCの情報が必要になります。なぜなら、彼らは域内の事業者でありこの義務は免れないからです。
このサプライチェーン上のSVHCの情報伝達は、上記のように欧州域外の我々に直接の義務はないのですが、欧州の販売会社や輸入代理店から、必要な情報をよこせ! と言われることになります。
REACH規則のSVHCは、欧州固有のものですから日本の化学メーカーがその情報を下流に伝達する義務なんかありません。
なので、必要な情報をよこせと言われた成形品を作っているメーカー(主にかなり下流のメーカー)は、サプライチェーンの上流に向かって、SVHCを調べることになるのです。
じゃあ実際どう対応してるの?
では、どうやって皆さん調べているのでしょう。
この問題への対処方法も、原材料メーカーと最終製品に近いものの製造業では考え方は、かなり異なります。
最終製品を作っているメーカーでは、本当にこんなの全部集まるのかよ?と思っている人も多いはずです(本当か?)。ですので、対応はとにかく聞いておこうということになります。
というのも、管理の仕掛けとしてそういうことをきちんとやっていることが必要だからです。サプライチェーンの長さや上流に遡ったらどこの国に行くのか、もしくはどの程度まで広がるんだと考えると頭が痛くなるはずです。
また、対応時期の問題もあります。自動車業界は、2000年の欧州の廃自動車指令に対応するために、大手の弱電メーカーで海外販売比率の高いところは改正前のRoHS指令の時に管理の仕組みを作っているはずです。ところが、産業機器や医療機器は、RoHS指令対応をしなければならい時期が遅かったので、上流に化学物質情報を聞くとか社内の製品化学物質管理をする仕掛けの構築は、少し遅かったはずです。それらに関係ない企業の皆さんは、更に遅く、今でも仕掛けがない企業の方もいるかもしれません。
サプライチェーンに関する仕掛けが作ってあれば、REACH規則の情報伝達についてはデータがどれほど戻ってくるかは別にして、聞くことはできます。もちろん、なぜこんな調査をするのかは相手先に説明しておく必要があります。
IMDSやchemSHERPAのような標準化されたツールを使ってもよいでしょうし、第25次のSVHC8物質が新たに足されたので、それは入っているのかどうか文書で聞くことも可能です。
一方の原材料メーカーについては、管理人は原材料メーカーにいたわけではないので見聞きした範囲です。
一例としては、いや面倒だな、多分入ってないという自信はあるけど、一応測っておくか。
別の例としては、いや今回のSVHCはどう頑張っても0.1wt%なんて入ってないでしょう、無しで出しておこう。
どちらにしろ、非常に論理的に入っていないことを証明する対応をされます。
それだったら、全部集まるはずですよねと思ったそこのあなた、世の中そんなに甘くありません。全部集まるのは、すべての原材料メーカーがそのような対応をしてくれ、かつ、商社や川中の企業が正しくデータを集積してくれた場合にのみ成り立ちます。今はそんな会社は少ないかもしれませんが、中には、RoHS?、REACH?なんだそれ、バラと麻雀かという会社が無いとも限りませんし、海外メーカーからデータが返ってこないということもあると思います。
ということで、大部分の場合、川下の企業から見ると全部集まらないということが起きます。でも、回答が来ていないものの管理の仕掛けでPDCAができて、回答が来ないところにはフォローがかけられている状態ならば、今現在ある程度良しとしなければならないかもしれません。
その場合は、いつまでには回答がすべて貰えるようにするなどの計画があるべきとは思います。
それと、川下の企業でも絶対入ってないだろうと分かる物質もなくはありません。例えば、REACH SVHC:追加分だけゆっくり解説(11)で取り上げた2-(4-tert-butylbenzyl)propionaldehyde and its individual stereoisomersですが、ほとんどの場合香料として使われてきました。例えば、産業機器を作っている方が普通香料なんか使いますか?0.1wt%も使ってりゃその部品からある程度臭うだろうし。ということで論理的に考えて入ってないということが可能な物質もあると思います。
以上のように、SVHCを調査するやり方は、標準ツールを使う、文書で聞くなどの方法がありますが、社内でどうしていくのか管理の仕掛けを決めることも非常に重要です。
それとSVHCの調査に関してはREACH規則だけではなく、最近では、廃棄物枠組み指令(WFD)によって、欧州のデータベースであるSCIPへの登録も義務化されているので、更にSVHCに関する調査要求は強くなるだろうと思います。
でも、最初に書いたように、日本の会社であればREACH規則の罰則を直接受けることはありません。もちろん、問題が起きたら納入先(顧客)からどうしてくれるんだ!とは言われます。
SVHCの調査に関して答えになってない?うん、皆さん苦労されてますよ(^^;。
個社の事情に合わせた管理の仕掛けのコンサルティングをOFFICE KSやJEMAIではお引き受けしていますので、お気軽にご相談ください。
答えがいっぱいあるものもある
今回のSVHCの調査のようにサプライチェーンの位置と化学物質情報伝達については、その企業の立ち位置や製品によって、答えが沢山あったり、よりよい方法を選ぶというものも多いです。
社会にでたら学生のころと違って正解は一つとは限らないという例かもしれません。
なので、答え書いてないじゃんという突っ込みは無しでお願いしますね(^^)。
今回の記事と全く関係ありませんが、ちょっと前の記事で、オリンピック期間中記事のブログの更新頻度が下がると書きましたが、間違いでした。
頻度が下がるのは、今週から来週前半にかけてです。結局、お盆期間中だったというか、1週間間違えてました。
コメント