REACH 制限物質(その29)は、Entry38の1,1-Dichloroetheneです。
今回は、1個の物質でそれも単純な構造だから楽かも。ちなみに、Entry39は欠番です。
Entry38 1,1-Dichloroetheneの基本情報
Entry38 1,1-Dichloroetheneの基本情報を見ていきましょう。
化学物質名:1,1-Dichloroethene
和名:1,1-ジクロロエチレン
別名:ビニリデンクロライド、塩化ビニリデン、二塩化ビニリデン、1,1-Dichloroethylene、Vinylidene chloride
化学式:Cl2C=CH2
分子量:96.94
構造式:
CAS RN : 75-35-4
EC No.: 200-864-0
融点:-122℃
沸点:31.2 – 31.7 °C
引火点:-25~-19℃ (測定法等によりいくつかの数値が存在)
常温では沸点も引火点も低い可燃性液体なので、物理的危険性を持っていることがわかります。分子量は重いので部屋の下にたまることになりますね。
Entry38 の1,1-Dichloroethene危険性は何か
ECHAのSubstance Infocardによれば、この物質は非常に可燃性の高い液体および蒸気であり、吸い込むと有害であり、がんを引き起こす可能性があるとされています。
この物質は長期的または反復的な暴露により臓器に損傷を与え、がんを引き起こす可能性があり、飲み込むと有害であり、深刻な目の炎症を引き起こし、長期的な影響を及ぼす水生生物に有害であるとされています。
日本の職場のあんぜんサイトにあるSDSの例では、
極めて引火性の高い液体及び蒸気
飲み込むと有害
吸入すると有害
発がんのおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
神経系、呼吸器、肝臓、腎臓の障害
眠気又はめまいのおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による血液、呼吸器、肝臓、腎臓、生殖器 (男性) の障害
水生生物に有害
と危険性のオンパレードで書いてあります。
日本の規制においても、この化学物質が関係する規制においては、ほとんど対象になっています。
どこに使われているか
この物質は、EU域内で≥ 1 000 to < 10 000t/y製造輸入されていて、REACH登録されています。
この物質は、一般市場や成形品、更には専門作業をする人の原材料としては使用されていないとされています。
使用しているところは工業の事業所で、ほかの化学品を作る中間体として、ゴムやプラスチックを作るために使われます。
NITEのCHRIPには、合成原料 [家庭用ラップ, 包装用フィルム, その他加工品 (人工芝,漁網等), 塩化ビニリデンラテックス, 難燃性繊維]および
包装フィルム,紙やプラスチックフィルム類のコーティング剤(書いてないけどこれらの原料だと思う)とあります。
なので、普段の生活でこの物質から合成されて作られる製品を見たことはあっても、この物質に直接曝露することはありません。
制限条件
Entry38 の1,1-Dichloroetheneの制限条件は以下のようなものです。
本附属書の他の部分を損なうことなく、Entry32から38には以下が適用されます。
- 市場に出してはならない、または使用してはならない。
ー物質として。
ー物質として、他の物質の構成要素として、または0.1重量%以上の濃度の混合物として、
ここで、物質または混合物が、一般大衆への供給を意図している場合、および/または、表面洗浄や繊維の洗浄などの拡散用途を意図している場合である。 - 物質および混合物の分類、包装および表示に関する他の共同体規定の適用を損なうことなく、供給者は、0.1重量%以上の濃度でそれらを含む当該物質および混合物の包装が、以下のように目に見える形で、読みやすく、かつ消えないように表示されていることを、市場に出す前に保証しなければならない。
’For use in industrial installations only’
本規定は、以下のものには適用されないものとする。
(a) 指令 2001/82/EC および指令 2001/83/EC で定義される医薬品または動物用製品。
(b) 指令 76/768/EEC で定義される化粧品。
ここで、Entry32から38には、上に書かれている制限条件と同じものが適用されると書かれていますが、Entry32から38は、塩素系有機溶剤が順番に書かれています。
管理人的には記事を稼ぐのが楽なので、ひとつずつ(^^)紹介させてもらいます。
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